第三十六話 主導権
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めてミュラーを見た。
「頼むよ」
「……分かった」
「有難う」
ミュラーと二人、無言でブリュンヒルトの廊下を歩く。主導権を取れずにいる、取った様に見えるが取りきれずにいる、そう思った。だが同盟が主導権を取ったとも思えない。お互いに主導権を握るために駆け引きをしている、そんなところか……。俺の予想が正しければ作戦面で少し同盟が有利かな。しかし戦力の多寡で互角、いや未だ帝国が有利か……。どちらかが主導権を握った時点で戦局は動くだろう、油断は禁物だな……。
帝国暦 490年 2月20日 ガンダルヴァ星系 ウルヴァシー エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
「結局反乱軍は出てきませんでしたな」
「……そうですね、出てきませんでした」
俺が答えるとメルカッツは頷いた。旗艦マーナガルムの艦橋の空気は重い。同盟領に攻め込む時に有った浮き立つような空気は綺麗に消えている。ちょっとぐらい上手く行かなかったからって落ち込むなよ、全く。勝ち慣れて逆境に弱くなってるんじゃないのか。
ランテマリオで肩透かしを食らった後、帝国軍本隊はガンダルヴァ星系第二惑星ウルヴァシーに向かった。惑星ウルヴァシーは宇宙服などの装備が無くとも人間が生活できる居住可能惑星なのだが同盟による植民活動はされていない。惑星開発の企業が開発を失敗したため放置されていたらしい。もったいない話だよな。
帝国軍がここに来たのは気紛れではない。帝国はこの星に半永久的な軍事拠点を築くつもりだ。全同盟領が帝国の物になった時、惑星ウルヴァシーは武力反乱や海賊行為を働くならず者達を鎮圧するための拠点となる。もっとも原作ではラインハルト暗殺未遂事件が起きロイエンタール反逆という悲劇の起点になった。まあ場所は悪くないんだ、フェザーンとハイネセンの中間あたりにあるからな。この世界ではオーベルシュタインの影響力は小さいしラングも居ない。多分、惑星ウルヴァシーは役に立つだろう……。
一昨日、イゼルローン方面から出撃したキルヒアイス率いる別働隊もウルヴァシーに合流した。惑星ウルヴァシーに集結した帝国軍の兵力は艦艇二十万隻、将兵二千万を超える。同盟軍の三倍以上の兵力がここに集結している事になる。見渡す限り艦ばかりだ。
「反乱軍は何を考えているのでしょう」
ゾンバルトが問いかけてきた。こいつは大分俺に慣れてきた様だ。当初有った気まずさは余り感じられない。
「さて」
俺がメルカッツに視線を向けるとメルカッツも“フム”と言って考え込んだ。
「常識的に考えればハイネセン付近でこちらを待っているという事になりますが……」
今度はエンメルマンがこっちを窺いながら話しかけてきた。反乱軍がランテマリオに出ないと予想したのは俺だけだからな。どうやら皆、俺がどう考えているか
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