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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第三十六話 主導権
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各星系が独自の判断で出したのなら良い、しかし同盟政府の命令で出しているとしたら……。

「反乱軍は我々をもっと奥深く引き摺りこもうとしている、そういう事か」
ラインハルトの表情が渋い。いや、皆の表情が渋くなっている。先年の同盟軍による帝国領侵攻を思っただろう。あれはやられた方にとっては地獄だからな。想像するだけで悪夢だ。
「私には何とも言えません。ただ同盟軍が出てくるとは限らない、そう思っています」

原作では同盟は帝国軍が同盟領内に侵攻してくるとは考えていなかった。帝国がイゼルローン、フェザーンの二方向から攻めて来るとは考えていなかったのだ。これまで通りイゼルローン要塞での攻防戦に終始すると想定していた。その所為で帝国がフェザーンを占領した時にはパニックになってしまった。フェザーン方面の星域を同盟側に引き留めるためにはランテマリオで決戦せざるを得なかった。

だがこの世界ではどうだろう。内乱終了後の時点ではイゼルローン要塞は帝国側に奪還されていた。つまり帝国軍の同盟領侵攻は既定の事だったという事だ。当然だが同盟軍はそれを前提に迎撃計画を練ったはずだ。同盟の戦力が原作より一個艦隊多い事もそれを裏付けている……。

ラインハルトが可能性は有るなと呟いている。嫌な予感がする、俺は過小評価していたがこの世界ではトリューニヒトが失脚した。つまり軍内部におけるトリューニヒト派は原作ほど大きな勢力を持っていないのかもしれない。実際統合作戦本部長はクブルスリーのままだ。

そしてヤン・ウェンリーがハイネセンに居る。原作ではイゼルローン要塞に居たため一前線指揮官でしかなかったがクブルスリーもビュコックもヤンを高く評価している。この世界で同盟軍の迎撃計画の立案にヤン・ウェンリーが関わっていないと言えるだろうか。関わっているとすれば単純な正面決戦による防衛戦を挑んでくるとは思えない……。

結局会議はとりあえずランテマリオまで進んでみようという事になった。何ともあやふやな話だ。さっきまでの昂揚した雰囲気はきれいさっぱり消えていた。決戦を想定して布陣も決めたが原作と殆ど変りはない。俺の持ち場はビッテンフェルト、ファーレンハイトと一緒に予備だ。大いに結構、決戦なら俺の出る幕は無い、黙って見ているだけだ……。

帰り際にミュラーと一緒になった。ミュラーは不安そうな表情をしている。
「エーリッヒ、どうなるかな」
「さあ、どうなるかな。とりあえずランテマリオまで行ってみるしかないね」
馬鹿げているな、俺もあやふやな事しか言えない。ウンザリしたがウンザリしてばかりもいられない。

「ナイトハルト、頼みが有る」
「何だ?」
「これから先、私が卿に協力を求めた時は断らないで欲しい」
「……」
ミュラーが足を止めじっと俺を見ている。俺も歩くのを止
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