第百二十六話 溝その九
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「そして朝倉がそれに対するならです」
「大義名分を失うのはあちらじゃな」
「そうです、朝倉になりますので」
「猿夜叉もわかるな」
「その際は。そして朝倉は懲らしめです」
攻めてそうしてだというのだ。
「家中に加えればよいかと」
「わしの時と同じですな」
元親が笑って言ってきた。彼も完全に織田家の人間になっている。
「一戦交え負かして」
「それで降らせてな」
「終わりにされますな」
「それで終わればよい」
信長はこれまでの戦のことを思い出しながら元親に述べる。
「こちらとしてもな」
「ですな、では」
「朝倉が理を見せればそれでよい」
織田も理を見せるのでそれに応じればというのだ。
「まあ宗滴殿は頷くだろうが」
「主の着景殿は、ですな」
「あの御仁は」
「主はあの御仁じゃ」
その義景だというのだ。
「あの御仁はあれで誇り高い」
「織田家に膝を屈せぬ」
「そう考えられますな」
「わしはそこまでは言わぬがな」
信長は主の座にある肘掛けを使って右手で頬杖を突きそのうえで難しい顔になって家臣達に言ったのである。
「ただこちらに入ればな」
「それでよいですな」
「こちらとしましては」
「しかし織田と朝倉の因縁がある」
これはどうしてもだった、義景には特に強くあるものだ。
「あの御仁がこだわらぬ筈がないわ」
「それ故にですな」
「どうしても」
「ややこしいのう」
信長は頬杖を突いた姿勢のまま言う。
「人の意地というものは」
「誰にも意地はありますな」
安藤の言葉だ。
「それは中々引っ込められませぬ」
「わしもそうじゃしな。意地は難しいわ」
「それがしにもありますし」
「わしにもな」
無論信長にも意地がある、そうしたことからも意地が誰にもあることがわかる。
「それはあるわ」
「ではこれからですな」
村井が畏まって言う。
「朝倉殿とのやり取りに入りましょう」
「公方様を通じてな。公方様にもな」
問題は義昭もだった、彼への話にもなる。
「文をしたためるか。ではその前にじゃ」
「はい、それがしが都に上がります」
山内が頭を垂れて信長に言う。
「そうして参ります」
「勘十郎からも話を聞いてくれ」
「畏まりました」
「わしもまた都に行くか」
自分の目で見なくては気が済まぬ信長らしい言葉だ。
「そうしようか」
「ではその前にそれがしが」
「御主や勘十郎の話があまりにもだと上洛する」
そしてその目で見るというのだ。
「その時はな」
「さすれば」
こうしてまずは山内が上洛することになった、彼は己の供の者達と共に妻が用意してくれた名馬に乗り岐阜を後にした、そのうえで都に入った。
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