before charge:紅姫と幻視の魔王
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やる気満々、だな。
なんか頭に来る。
そう思いながらゆっくりと刀を鞘から抜き放ち、間髪入れずに間合いを詰めるため雷鳴の如く走り出す。
アリアは見切ったように、2つの銃口をこちらに向け、弾丸の嵐を巻き起こす。
──バリバリバリバリバリバリっ!!
すさまじい銃声を響かせ、放たれた無数の弾丸の雨。
恐れることなく、止まることなくその凶悪な雨へ突っ込んで行く俺。
その瞬間の出来事だった。
「ぐはぁっ!!」
──それは、いとも簡単に俺の皮膚を突き破り、内臓を貫いて空に鮮血の大輪を咲かせた。
苦渋の呻き声だけが、そこに響き渡る。
「嘘!?防弾制服じゃなかったの!!」
弾丸が貫通した力で大きく仰け反り、ゆっくりと後ろへ倒れていく俺。
自分がしたことが信じられず、思わず拳銃を投げ捨て駆け出して倒れる俺へ近づくアリア。
そんな、防弾制服を着てなかったなんて。
ピクリとも動かない俺をゆっくりと抱え上げようとした時。
背後からパチン、と指の鳴らす音が聞こえて我に返ると、そこには袋小路の壁だけがあった。
「何かが必ずしも目の前で起こるとは限らない。それが嘘か真か、誰も知る術はない。一度見たら最後、古より伝う幻の虜になる。さて、一度限りの夢幻(ゆめ)はお気に召しましたか?」
風に奏でるように囁く、低く妖艶な甘い声。
慌てて振り返るアリアは目を疑った。
背後に佇むのは、先ほど彼女に撃ち殺されたはずの七音本人だった。
何が起きたか分からず、呆気に取られて茫然とする彼女。
それを見て嘲笑うかのように笑む俺。
投げ捨てた二挺の拳銃を拾い、アリアの前に優しく放る。
「ほれ、落とし物だ。ちゃんとしまっとけよ?」
「……あ、うん。ありがとう」
「んじゃな。戦意喪失の相手を襲うほど俺は悪いやつじゃないんでね」
「……ちょっと待って。せめて名前だけ教えてよ」
「名前だけ?……仕方ねぇな。俺は紫桜 七音。んじゃまたどこかで逢おう」
踵を返して袋小路から去る俺。
出口辺りで一哉が壁に寄りかかって俺の帰りを待っていた。
「よう。待たせたなカズ」
「待ってたってほどじゃないよ七音。あれ、使っちゃったんだ?」
「まあな。逃げるためには仕方ねぇだろ」
「傀儡眼(かいらいがん)……だっけ?本当に便利だよね?さすがは幻……」
「バカヤロ。それ以上は喋るな。思い出したくもねぇ」
思いきり一哉の顔を叩きながら言う俺。
痛そうに顔を擦る一哉を尻目に、俺は駐車場に止めてある車に向かう。
これが俺たち『蒼碧の双銃剣舞』と、後に鬼武偵として世界に名を轟かせる神崎・H・アリアとの、ちょっと変わった刺激的な出会いであり──。
最悪な日々の訪れを告げる前兆だったとは、俺たちは知るよし
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