十三話 前
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(……ここか。ここの二階に行けばそこが……)
街の中心をやや外れ、周囲に学習機関もいくつかあるエリアのその一部。三階建てのレンガ造りの建物の入り口を抜け、右奥にある階段をニーナは登る
思わず急ぎそうになる足を抑え、そうして今更ながらに自分の速くなっている鼓動に気づく
そんな自分に苦笑し、軽く息を吸いながら意識してゆっくりと一歩一歩ニーナは上へと上がっていく
速足は、気が急いているから。速くなる鼓動は、目の前にまで来ている出来事に対する未来への期待から
ずっと考え、そして出した結論への入口だから。初めて自分で選んで歩く道への第一歩だから。後ろめたさもゼロではないが、それでもこの歩みを止める理由にはなりえない
持ち物は小さなカバンに、服装は目立たないようにと考えた、いつもと違うこの日のためのシンプルな安物の服
目当ての部屋の前に辿り着き、カバンから出した紙で何度か確認し戸を空け、中に入る
ニーナが入った後、大部屋へと通じるその扉はギギギギ、と僅かに錆びた音を立てながら閉まっていき、その道を閉ざす
武骨な大きな金属製の扉。その上部には、その部屋の役割を果たす白いプレートが上から光を浴びせる電灯に照らされ、光を反射しその存在を誇示する
?????≪学園都市入学試験会場≫、と
「ハッ!」
短く、けれども力強く吐かれた息と同時に拳が伸びてくる
タイミングを合わせ、足で地を蹴るのではなく重力に任せるようにしながら体を前に出し、腕の外側の側面に回り込みながら伸ばされた腕を掴み、伸びる力に合わせるように捻り、そのままもう片方の手を肩の方に伸ばす
腕を掴まれた者は相手の意図を理解し、肩を掴まれる前に捻る力に逆らわずに逆足を一歩前に踏み込んで体を前に出し、そのままその足に力を入れて地を蹴り、体重をも載せた全力の肘を斜め後ろに向けて撃つ
それを察知した相手は掴んだ腕の力を強め、膝の力を抜き姿勢を低くし、打たれる肘に合わせて掴んだ腕を後ろに押しながら捻り後ろ重心になっている相手の足を払い、バランスを完全に崩させる
重心が完全に崩れたこと、後ろに向けた力をそのままいなされたこと、そして捻られた腕に押されるように相手はそのまま後ろに倒れ、地面に背を付けたところに相手の拳が眼前へと突きつけられる
上から押さえつけられ、そして胸に押し付けられた捻られた自分の腕のせいで起き上がることもできず、ろくに足掻くこともできない上目の前には寸止めされた相手の拳
それを見、倒れた者????ニーナは自分の負けを認める
「これで七度目、か」
呟かれた言葉は今日の鍛錬での自分の負け数を端的に表す
柔軟が終わり、武器を使っての打ち合いに入る前の無手での立ち合い。体を温め、身
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