―ジェネックスを超え―
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足取りが重く、今はもはやただの惰性で歩いていると言っても差し支えなく、言うなればゾンビのようであった。
それでも俺はラー・イエローの寮に帰らなければならず、それだけのために移動しているようなものだった。
そしてラー・イエロー寮の入り口には、予想通りの――会いたくなかった――人物が二人立っていた。
俺と同じように、今では珍しくなった蒼い制服を身にまとった友人たち。
三沢大地に天上院吹雪……俺が今謝らなければいけない人物のうち、明日香を除けば一番優先度が高い人たちだった。
「どうしたんだい遊矢くん、明日香が帰ってきているかと思えば寝たきりだし、君は部屋にいないし……」
急いで駆け寄ってきて、妹と自分のことを心配してくれる吹雪さんには悪いが……俺は吹雪さんの頼みを果たせなかった。
「……俺は、明日香を助けられなかった……!」
言わなくてはいけない心情を吐露すると、流石に吹雪さんも驚いてこちらを見据えてきた。
「明日香は斎王の罠で目覚めないようになっていて……斎王に会う権利を賭けてエドとデュエルして……負けて、俺は明日香を救う方法とメダルと鍵を失った……」
矢継ぎ早に俺の行動を報告していくと、今まで何も言わなかった三沢が俺に向かって言い放った。
「なら、どうする?」
視線を逸らさずにしてくれている三沢に、あの親友はその言葉に反して、自分が何がしたいのか解ってくれているのだと解る。
「……それでも俺は諦められない。明日香を助けるために、二人の力を貸してほしい」
そのセリフを聞いた二人も協力を要請されるのを待っていたようで、吹雪さんなどは露骨に「待ってました」とばかりに口笛を鳴らしてきた。
明日香を助けるまで、今はまだ諦める状況じゃない……そう俺は心を決めると、全身に力を入れ直した。
先程までは、どうしてもネガティブになってしまっていたが、この二人の協力を得られるならば心強い。
「だが、斎王に近づくのは難しいのはどうする?」
自力で斎王の下に行くことが可能であれば、わざわざあのメールに従わずとも良かったのだが、斎王はホワイト寮からとんと出てこない。
強行突破などしようものならば、光の結社全員を相手どることとなってしまうだろう。
いくら明日香を助けると息巻いていても、相手の組織力という力の前には、三人程度ではどうしようもない。
「そのことなら、僕に名案がある。二人は先に、ホワイト寮へと行ってくれないか。……ああ、もちろん見つからないようにね」
そう発言したのは吹雪さんであり、そう手には何故かPDAが握られていた。
……何やら騒ぎを起こすのは吹雪さんの得意分野だが、何をするつもりだろうか。
「何をするつもりとかは……」
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