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夢盗奴
第二章 別れ
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だだ。だけど、俺にはそんな余裕などない。親父の遺産はお袋があらかた食いつぶした。狛江の土地も相続税が払えず物納だ。残ったのは300坪の土地と家だけだ。
とはいえ、そんな家の事情を話すのも癪だな」
「そんなことないよ。ない袖は振れんと言うべきだ。俺なんて50万小切手切らされた。阿刀田先輩には昔から泣かされっぱなしだ。でも、怒ると怖いからな」
「ああ、まったく。ところで樋口洋子はどうしているんだろう。お前聞いているか」
「ああ、横浜の金持ちのぼんぼんと結婚したって聞いている。一度横浜で会ったことがあるけど、とにかく派手な女だよ。上から下まで金ぴかで、こてこてだった。お前別れて正解だよ。あんなんじゃ、いくら稼いだって追付きゃしない」
二人の背後に佇んでいた後輩の上野が割って入った。
「いや、それがそのボンボンってのがかなりのやり手で、洋子に不審を抱いて私立探偵をつけたらしいんです。結局、彼女の浮気がばれて家を追い出されたってことですよ。その後、六本木のうちの店にもよく来たけど、相変わらず派手だった。あのスタイルだから目立ってましたよ」
上野はその店のオーナーだ。桜庭がにやにやしながら聞いた。
「もしかして、お前、洋子を食っちまったか、それとも食われちまったか、どっちかだろう?」
上野は真っ赤になって否定したが、桜庭はにやりと笑って意味深な視線を中条に送ってきた。中条は深い溜息とともに色褪せた青春のマドンナの思い出を屑籠に放り投げた。
 結局、上野も寄付を迫られているという話しにうんざりして、中条は、阿刀田に気付かれぬよう会場を後にした。その日は桜庭等二人と六本木で飲み明かしたのだが、数日後、阿刀田から電話が入った。案の定寄付の話しだったが、やんわりとお断りした。
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