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夢盗奴
第一章 出合
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女の方よ。執拗に無言電話を繰り返し、しまいには会社にまで電話してきて、あることないこと言いふらして、全く信じられない。彼女、貴方に夢中なのよ。貴方に対する執着が彼女を狂わしたのかもしれない」
 中条はウエイターが入れてくれた二杯目のコーヒーを口に含んだ。苦い。中条は心の内で一人呟いた。本当だろうか、舞が常軌を逸したというのは?確かに舞の様子は尋常ではなかった。言われてみればそんな気もしてくる。洋子の言葉が続く。
「あの人、どうかしてるわ。何度呼び出されたか分からない。その度に、貴方と別れろってしつこく迫るの。今の会社にいられなくしてやるって。最近では上司も私に不審な視線を向けている」
 ここで言葉を切った。そして涙声で言った。
「あの人が、私のこを、誰とでも寝るって、尻軽な女だって、会社の同僚に言いふらしたのよ」
 洋子は突然テーブルに突っ伏した。その肩が小刻みに震えている。
 何が真実なのか分からなくなった。恐怖に顔を歪ませる舞も、目の前で泣き伏し肩を振るわせる洋子も、ともに演技しているとは思えない。しかし、明らかにどちらかが嘘をいっている。結局、真実は分からずじまいで、二人の交際もずるずると続いていった。
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