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万華鏡
第二十九話 兵学校その十四
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「動けないわよ」
「ですか」
「生きてると食べないと、私でもね」
「わかりました」
「ダイエットとかは気にしないでね」
 それは今は、というのだ。
「頑張るのよ」
「むしろ食べないとですね」
「身体がもたないから」
 だからだというのだ。
「とにかく食べてね」
「はい、じゃあおかわりもして」
 こう話してそうしてだった、あらためて食べてみる。二口目も三口目もだった。
 カレーは美味かった、後はそのままどんどん食べられた。
 皆勢いよく食べていく、まずは男子生徒達が席を立っておかわりに走る、続いて女子もそうしていくのだった。
 琴乃達もだ、おかわりをしてまた食べてから言う。
「これなら何杯もね」
「いけるね」
「これだけ美味しいと」
「お腹一杯になるまで」
「食べた分のカロリー消費が楽しみね」
 先生もカレーを食べつつ言う。
「午後の部活でね」
「軽音楽ってカロリー使いますよね」
 彩夏がそのカレーを食べつつ語る。
「運動部並に」
「そうよ、実はね」
「そうですよね」
「演奏自体に体力が必要だし」
 まずこれがあった、軽音楽ではやはりこれが第一だ。
「そこでカロリー使って」
「体力錬成に運動しますしね」
 これはランニングやサーキットトレーニングだ。
「後ダンスもしますから」
「本当にカロリー使うでしょ」
「それこそ運動部並に」
「だからよ、動く分だけで」
「食べることも必要なんですね」
「とりあえず太ることは考えないの」
 女の子がよく気にするそうしたことはというのだ、考えずに食べろというのだ。
「まだまだ若いんだし」
「太ってもいいんですか」
 彩夏はこのことを少し不安な顔で先生に問うた。
「それは」
「太らないから」
「だからですか」
「そう、その分動くから」
 だからだというのだ。
「むしろ食べないと駄目なのよ」
「ううん、そうなるんですね」
「多少太ってもすぐに取り返せるから」
「そうですか?」
「痩せたければ食べろとも言うでしょ」
 先生は今度はこの言葉を出した。
「そうでしょ」
「ええと、その言葉は」
「ほら、美白研究家でいたじゃない」
「それ誰ですか?」
 彩夏はそう言われてもきょとんとするだけだった、それは何故かというと。
「ええと、今もうおられないですね」
「あれっ、鈴木その子知らないの?」
「誰ですか、それ」
 やはりきょとんとなって先生に返す彩夏だった。
「あの、本当に」
「ええとね、もうお亡くなりになったけれど」
 それでもだというのだ、先生は名前を出してもわからない彩夏に話した。
「そういう人がいたのよ。つまり美容研究家よ」
「美白研究家はそうなんですね」
「そう、美容研究家で。それでその人がね」

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