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レインボークラウン
第三十話

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                第三十話  偉そうだけれど 
 ワラビはライゾウと話をしながら彼を見てこんなことを言った。
「あんたを見てるとね」
「ああ、男前だろ」
「顔はいいけれど」
 このことはワラビも認める、確かにライゾウは猫としてはかなりの美形だ、スコティッシュフォールドの中でもトップクラスだろう。
 だがそれでもだと、ワラビは彼に言うのだ。
「ご主人達に怒られない?」
「悪戯したら怒られるぜ」
「いえ、偉そうにしてるとかで」
「実際においら偉いからな」
 胸を張ってドヤ顔で言うのだった。
「別にどんな態度でもいいだろ」
「いや、使い魔よね」
「それでも偉いんだよ」
 まだこう言う、あくまで自分を偉いというのだ。
「おいらはな」
「偉そうにしてたら怒られると思うけれど」
「まあ実際ご主人には偉そうって言われるよ」
「ほら、やっぱり」
「けれど怒られたことはないんだよ」
 偉そうにしていることでは、というのだ。
「別にな」
「随分と優しいご主人なのね」
「いや、別に優しくはないしさ」
 これはライゾウから見たところだ、彼にとって華奈子は些細な悪戯も許さない実に厳しいご主人である。尚これはかなり自己中心的な見方であることは言うまでもない。
「というかそっちのご主人そういうので怒るのかよ」
「いえ、私ご主人に怒られたこと滅多にないわ」
「私もよ」
 ワラビだけでなくケムンパスもだった、このことは。
「私いつも大人しくて優しいって言われるだけで」
「私はしっかりしてるって言われてね」
 それで怒られたことはないというのだ。
「いつも怒る必要が殆どないって言ってもらってるの」
「むしろしっかりして頼りになるってね」
「おいおい、おいらいつも悪い奴って言われてるぜ」
「僕は今一つ頼りないってね」
 タロは華奈子にこう言われている、ただし言っている華奈子の方に悪意はない。
「ご主人だけでなくご主人の双子の相方の人も言うしな」
「うん、美奈子さんもね」
「まあねえ、あんたは確かに悪そうね」
 ケムンパスはライゾウのその如何にも悪そうな、よく見れば髭はカイゼル髭の様に反り返っている顔を見て言う。
「我儘って言われるでしょ」
「ああ、いつもだよ」
「さもありなんね」
「そこで納得するのかよ、ったく」
「心の奥底からね」
 ケムンパスはワラビより手厳しい、しかしそれでも和気藹藹とした雰囲気の中でお互いに話をしていくのだった。


第三十話   完


                   2013・4・18
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