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剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第五話 燃える心
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とその姿を明確にし。一人の男の姿を創り上げた。

 

 シロウさん……あなたは何度わたしを救ってくれるのですか。


 拐かされ、騙されルイズに杖を向けた時も……。
 

 寂しさと虚しさに心砕かれようとした時も……。


 復讐心で曇った眼で始めた戦争で、兵士たちの命が無残に散る筈だった時も……。


 そして、心が凍ってしまったわたしを……。 


 ………一体……何度、助けて…………。



 グラスに満たされたワインがゆらりと揺れる。

 そこで自分の身体が小刻みに震えているのを自覚した。

 そして、頬を暑い何かが流れていることにも。
 
 ゆらりと―――ワインが揺れる。

 いくつもの輪が生まれては消える。
 
 それが、自分の顎から滴る雫によるものだと知った時、自分が泣いていることを自覚した。

 グラスから右手を外し、頬を撫でる。
 
 そこには火傷するほど熱い水が。

 
 
 どうすれば、あなたに報いることが出来るのですか……。


 あなたは、何を求めるのですか……。


 わたしは……何をすれば……。



 グラスを傾け、喉にワインを流し込む。

 痛い程の甘さが舌を包む。

 喉が焼け、胸が燃える。

 吐く息は熱く―――甘い―――。

 震える身体に両手を回し、空になったグラスごと胸に抱く。

 



「―――エミヤ……シロウ……戻って来られたら」

 



 瞼の裏に浮かぶ影の名を呟き、赤い唇を指先で触れる。


 
 唇は熱く濡れて。



 
 そして、甘い思い出が蘇り。




「……わたしに……出来る全てを……」




 
 期待に揺れていた。
 
  
 

 














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