第八章 望郷の小夜曲
第五話 燃える心
[9/9]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
とその姿を明確にし。一人の男の姿を創り上げた。
シロウさん……あなたは何度わたしを救ってくれるのですか。
拐かされ、騙されルイズに杖を向けた時も……。
寂しさと虚しさに心砕かれようとした時も……。
復讐心で曇った眼で始めた戦争で、兵士たちの命が無残に散る筈だった時も……。
そして、心が凍ってしまったわたしを……。
………一体……何度、助けて…………。
グラスに満たされたワインがゆらりと揺れる。
そこで自分の身体が小刻みに震えているのを自覚した。
そして、頬を暑い何かが流れていることにも。
ゆらりと―――ワインが揺れる。
いくつもの輪が生まれては消える。
それが、自分の顎から滴る雫によるものだと知った時、自分が泣いていることを自覚した。
グラスから右手を外し、頬を撫でる。
そこには火傷するほど熱い水が。
どうすれば、あなたに報いることが出来るのですか……。
あなたは、何を求めるのですか……。
わたしは……何をすれば……。
グラスを傾け、喉にワインを流し込む。
痛い程の甘さが舌を包む。
喉が焼け、胸が燃える。
吐く息は熱く―――甘い―――。
震える身体に両手を回し、空になったグラスごと胸に抱く。
「―――エミヤ……シロウ……戻って来られたら」
瞼の裏に浮かぶ影の名を呟き、赤い唇を指先で触れる。
唇は熱く濡れて。
そして、甘い思い出が蘇り。
「……わたしに……出来る全てを……」
期待に揺れていた。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ