第八章 望郷の小夜曲
第五話 燃える心
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を喜ぼうではないか!」
手を叩き大声を上げるジョゼフを、円卓に座る他の面々は複雑な顔で見つめていた。遅れたことについての反省を欠片も見せず、マイペースで話をするジョゼフに、何時もならば嫌悪や苛立ちを感じるが、今は逆にそのマイペースさに助けられていたからだ。その場の雰囲気を全く考えない言動に、何処の雪原だと言うような冷え込んだホワイトホールに、居たたまれなかった者たちから安堵の溜め息が漏れる。
「そう言えば皇帝陛下! きみの戴冠式に出られないで済まなかったね! いや本当は―――」
「―――会議を始めましょう」
次から次へと言葉を紡ぐジョゼフの口を止めたのは、今まで一度も口を開くことのなかったアンリエッタであった。
「ん? おお! きみはアンリエッタ姫ではないか! いやいや大きくなられま―――」
「まずはアルビオンの統治方法について話し合いましょう」
ジョゼフがアンリエッタに気付き、声を掛けてきたが、アンリエッタは一瞥も向けることなく会議を始める。大国であるガリアの王であるジョゼフを完全に無視した姿に、円卓を囲む面々が唖然とする中、アンリエッタは会議を続けようとする。
その様子に焦った様子で隣に座るマザリーニが、アンリエッタを諌めようとするが、
「へ、陛下……も、もう少し」
「……」
「い、いえ……何でもありません」
チラリと向けられたアンリエッタの視線に、背筋を震わせ黙り込んで縮こまってしまった。
再度静まり返ったホワイトホールにアンリエッタの澄んだ声が響く。
アンリエッタが主導する会議は順調に進んだが、始まって二時間程で『腹が痛い』とホワイトホールからR国やG国の代表が退出したことから、色々と決まる前に会議は解散となってしまった。
逃げるようにホワイトホールから自国も含む各国の代表が出て行く姿を見るでなく、暗く沈んだ瞳で虚空を見つめていたアンリエッタに、声を掛けるものが一人。
円卓の席、未だ退出せず、アンリエッタの正面に座っていたアルビオンの代表であるホーキンスだった。ホーキンスは他の代表がいなくなったのを確認すると、アンリエッタの隣りまで移動する。アンリエッタの隣に立つと、ホーキンスは頭を下げた。
「恐れながら、陛下に奏上したいことがあります」
「……」
頭を下げたまま声を上げるホーキンスを、チラリと一瞥するとアンリエッタは無言で先を促した。
アンリエッタの無機質に光る視線に背中に冷や汗を流しながらも、ホーキンスは話を続ける。
「アルビオンはこの度の戦で疲弊を極め、民はもはや日々の生活すらままなりません。この戦の責任は全て戦争を引き起こした我ら貴
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