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この世を最も笑わせるもの
第五章
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「この笑顔なんだよ」
「あっ、確かに」
「この笑顔は」
「これまでの笑顔と違いますね」
「それも全然」
「うん、これなんだよ」
 またこう言うのだった。
「この笑顔がね」
「ですか、この笑顔ですか」
「この笑顔がだったんですね」
「人の最高の笑顔」
「そうなんですね」
「人は何が一番幸せか」
 サルヤネンもその笑顔で言う。
「温かく美味しいものを食べた時だよ」
「特に寒い時ですね」
「その時に」
「どれだけ辛くてもね」
 それでもだというのだ。
「美味しくて温かいものがあれば」
「人は笑顔になれる」
「最高の笑顔に」
「しかもお腹一杯なら」
 それに加えてだというのだ。
「余計にね」
「笑顔になれるんですね」
「そう」
「うん、それを今わかったよ」
 最高の笑顔で目を輝かせての言葉だ。
「笑顔はそうだったんだ」
「ですか、それじゃあ」
「優勝は」
「決まりだよ」
 これで、だというのだ。
「彼だよ、そして」
「そして」
「そしてとは」
「この世で人を最も笑顔にさせるもの」
 この大会のテーマ、これの話にもなる。
「それは食べ物だね」
「その答えも出ましたね」
「あの人が出してくれましたね」
 他の審査員達も明るい顔で言う。
「いや、こういうことだったんですね」
「つまりは」
「そう、だから」
 それでだというのだ。
「これからも笑顔になろう」
 サルヤネンはカタヤイネンを優勝と決めたのだった、これからの笑顔のことも考えながら。 
 カタヤイネンは優勝の賞金と様々な賞品を貰った、その彼が優勝してからしたことは。 
 店に戻り客に自分の料理を振舞う、そしてここでも言ったのだ。
「いや、寒い外から来て温かくて美味しい料理を食べてくれて笑顔になってもらうと」
「嬉しいんだね」
 カウンターにいるサルヤネンが彼に返す、すっかりこの店の馴染みになったのだ。
「そうだね」
「はい、とても」
 カタヤイネンはそのサルヤネンに笑顔で返す。
「これが私の楽しみなんですよ」
「人を笑顔にすることが」
「はい、お笑い芸人じゃないですけれど」
 コックだ、それではない。
「ですがそれでも」
「人を笑顔にさせらるんだね」
「そうです、それで私も」
 彼自身もだというのだ。
「その笑顔の人達を見ていますと」
「うん、凄くいい笑顔だよ」
 サルヤネンがそのカタヤイネンに言う。
「本当にね」
「どうも、じゃあ何を召し上がられますか?」
「あのメニューを」
 サルヤネンは笑顔でこう返した。
「頼めるかな」
「わかりました、それじゃあ」
 カタヤイネンはすぐにそのジャガイモとスープを作った、その二つを心ゆくまで楽しんだサルヤネンの顔はあの時と同じ笑顔
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