第四章
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あまりもの寒さだった、日本人からしてみれば。
「これきつ過ぎるわ」
「フィンランドってこんなに寒いんかい」
「ああ、一瞬で身体冷えきったわ」
「コート着てても骨の芯までくるで」
フィンランドの凄まじい寒さに絶句していた、そこまで寒かったのだ。
それはサルヤネン達審査員達も同じだった、彼等にしても。
「流石の寒さですね」
「これはきついです」
「ちょっとありませんよ」
「あっという間に冷えました」
「あの人は一体何を考えているんでしょうか」
「お笑いどころじゃないですよ」
「きついですね」
サルヤネンも凍える顔で言う。
「これは」
「はい、失格ですか?」
「これは幾ら何でも」
「すぐに会場を閉じてもらいましょう」
「さもないと大会どころじゃないですから」
審査員達が動こうとした、だがここで。
カタヤイネンは笑顔でこう言ったのだった。
「では皆さん、今度は」
「今度は?」
「今度はっていうと」
「これをお召し上がり下さい」
彼が舞台で手を叩くとそれを合図にして。
開け放たれた会場の中に何かが来た、それはというと。
「鍋?」
「鍋ですか」
「火が下から燃えてますけれど」
「この鍋は一体」
「どうぞお召し上がり下さい」
カタヤイネンはにこりと笑って言うのだった。
「私の自慢のスープとジャガイモのふかしです」
「おお、スープですか」
「それですか」
皆スープと聞いて笑顔になった、この寒波の中で暖かいスープだ。
「それはいいですね」
「じゃあ早速」
「ジャガイモも頂きます」
「量はたっぷりありますので」
見れば鍋は幾つもあった、大きなものが。
会場にいる全員がお腹一杯食べられるだけあった、それで彼等もだった。
鍋に飛びつく様にして集まりそしてだった。
配られたスープにジャガイモを口に入れる、すると。
「うわ、美味いよ」
「いやあ、あったまるよ」
「冷え切った身体にこれはいいね」
「丁度大会が続いてお昼から時間も空いてたし」
「こんな美味しいスープははじめてだよ」
「ジャガイモも美味しいよ」
「どんどん召し上がって下さい」
カタヤイネンは笑顔で言う、そして彼の言葉を受けて。
観客達も芸人達も審査員達も、無論会場のスタッフ達もだった。
皆ジャガイモとスープを楽しんだ、そしてだった。
「いやあ、美味かった」
「満腹満腹」
「寒い時に温かいものっていいね」
「あったまるし美味しいし」
「いや、最高だよ」
「こんな幸せないわね」
「!?」
サルヤネンはここでだった、会場の中にいる人達の顔を見た、見れば。
皆笑顔だ、しかもその笑顔は純粋で屈託のない心からしわせを感じている笑顔だった。その笑顔を見てだった。
「これだよ
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