アインクラッド 前編
Turning battle
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そうに俯いたトウマの口から続いた響きは、尻すぼみに消えていった。
「いや、そういうのはないんだけど……」
「だったら相手を見てろ。よそ見をしていてクリティカルでも喰らったら、それこそマズイどころの話じゃない」
「あ、ああ…………」
自分の言葉が根拠不足であることを悟っているのか、掠れたような声で答えながらも腑に落ちないという表情を浮かべているトウマから視線を外し、再び梟へと投げた。すると、低く鳴く闇色の体躯の周りを同じ色の霧が覆い始める。やがてその霧は梟の全身を覆い、二人の視界を完全に阻んだ。
(……そういえば……)
ボスの攻撃パターンの変化に関する情報がないか、海馬の隅々までを探索していたマサキは、ある一つのクエストのことを思い出した。
そのクエストはトウマとマサキの二人が依頼を受ける前からボスの情報が報酬として得られるタイプのものだと推測されていたものの、実際には明確な情報は得られず、期待していた攻略組の面々をひどく落ち込ませ、更には一部のプレイヤーがマサキたち二人が情報の独占を目論んでいると言いがかりを付け、それが火元となり大騒動を巻き起こしたという、なんとも傍迷惑なものだった。
より具体的な内容としては、二十二層主街区から少し北に行った場所にある小さな村――そこに住む人々は“村”ではなく“国”だと言い張っており、事実、王や大臣、宰相などの役職が存在した――の住人が依頼したもので、その住人曰く
「異国人が大宰相になってから、民のことを第一に考えていた王が突然重税を課すようになった。これはきっと大宰相が王を操っているに違いない」
らしい。そしてその大宰相の罪を暴き、王を元に戻すことが目標という。SAOではあまり見ないタイプのものだ。
だが、珍しい部分はそれだけではなかった。
実は黒幕は大宰相ではなく、異国の地に就任したばかりで右も左も分からない大宰相にあれこれと進言し、あまつさえ王をも操った大臣だった。彼は自分の部署に割り当てられる予算を増やし、ピンハネを図ろうとした――。という、シナリオが売れない推理ゲームのように無駄に作りこまれていたことだ。中でも、
「人々の目を欺きつつ力を手にするには、どうすればいいと思う? ――なに、簡単なことだ。人々に目隠しをしておき、その間に人知れず王を、この国の頭をひっくり返せばいい。さすれば、人々が裏側に回りこまない限り、我らの存在が人々の目に映ることはありえないのだからな!」
「では、大宰相様を異国の者に代えたのも……?」
「ああ、そうだ。君たちから|見《
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