アインクラッド 前編
Turning battle
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「……高いな」
物々しげな重低音と共に開かれた扉の向こう、第十五層フロアボスルームが視界に入るなり、マサキは天井を見上げて言った。その言葉通り、この部屋の全高は今までのボス部屋と比べて随分と高い。
これまでの経験から、ボス部屋は基本的に同一の構造であり、その部屋の主、いわゆるフロアボスの特徴に応じて細部が変化――遠距離攻撃技を持つボスの場合は面積が広くなり、逆に強力な近接攻撃技を持つ場合は狭くなるなど――することを、プレイヤーたちは知りえていた。それは即ち部屋の構造からボスの特徴をある程度予測することが可能だということである。
「これだけ高いってことは……飛行型?」
隣で首をかしげているトウマの口から質問が飛ぶ。
「ああ、恐らくな。となると、少し厄介か……」
飛行型モンスターの特徴として、敏捷性に秀でているという点がある(例外は幾つかあるが)。もしこの部屋に住まうボスが大多数の側に属していた場合、危なくなって転移結晶で離脱する際に必然的に生ずる僅かな隙に攻撃を受ける可能性が高くなるということであり、それはそのまま生存率に直結する。ターゲットを分散させることができない少数での威力偵察の場合は尚更だ。
「……どうする? 一度戻る?」
「いや。ここまで来たんだ、ボスの攻撃パターンくらいは把握しておきたい。クエストで入手できる文章のみの情報と実際の体験とでは、やはり理解度や反応に差が出る」
「……ふーん……」
マサキの答えに驚いたのか、トウマは不思議そうにマサキを見た。それに気付いたマサキが逆に尋ねる。
「何だ、何か不満か?」
「不満はないけど……。何か、マサキらしくないな〜って思って」
「俺らしくない?」
マサキが更に訊くと、トウマは爽やかな顔のパーツを不思議そうに配置したまま「うん」と頷いた。
「だってマサキの性格なら、ここは絶対に引き返すと思って。「敵の情報ならば、クエストでNPCから入手可能だ。ここで死の危険を冒すことによるリスクとリターンとでは、とてもではないが釣り合わない」とか言って」
「……お前、俺のこと馬鹿にしてるだろ」
「敵の情報〜」のくだりを、眼鏡のフレームを中指で押し上げながら、警察の捜査に協力し謎が解けるとところ構わず数式を殴り書く某天才物理学者のものまねと思われる口調で話したトウマに対し、マサキは呆れたようにツッコんだ。ジト目で睨む視線の先で、トウマが苦笑を浮かべる。
「……まあいい。俺だって人間だ。多少の気まぐれぐらいは起こす。……ほら、行くぞ」
マサキはぶっきらぼうに言うと、壁際のろうそくがオレンジ色の光を放つ不気味な静寂との境界線を踏み越えていった。
「ホォォォォォォ……ホォォォォォォ……」
二人が部屋の中心付
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