第38話 誰が為に戦う(4)
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を起こして、なのはは空から急降下して純吾の元へと駆け付ける。
しかしそれを押しとどめたものがあった。気絶した純吾のズボンのポケットから漏れた、紫色の光だ。普段なら白い光を放っているはずのそれが地上に召喚陣を描き始め、純吾の力なしでは現界できないはずの仲魔が、彼の傍に現れた。
「リリー…さん?」
現れたのは純吾の意志で送還されたはずのリリーだった。純吾のすぐ傍に現れた彼女は少しの間何をするでもなく、倒れた純吾を立ち尽くしたまま見下ろす。
それからリリーは彼の横に座り、上半身が膝の上にくるように抱いた。気絶した純吾の頬を愛しそうに、優しく撫でた後、直前までジュエルシードを握りこんでいた彼の手を取った。
「ジュンゴったら…。板前さんになりたいんでしょう? なら、手は大切にしなきゃだめよ」
ぽつりとそう呟いて、その手を持ち上げ、自分の額に押し当てるリリー。瞬間白く、見ているだけで安らぎを覚える光が彼女達を包み込んだ。
フェイトとなのは、それにアルフやユーノですら、その光景を前に動く事は出来ない。彼、彼女には、今目の前に移るこれが、とても犯し難い、神聖な儀式の様に見えたからだった。
やがて光が収まり、二人が再び姿を現す。その時フェイトとアルフは、抱きかかえられた純吾の傷が殆ど回復している事に気が付いた。
けれど、それに驚きの声をあげる間もなく、フェイトの方へ何かが投げつけられる。反射的にそれを受け止めたフェイトは、自分の手のひらに血濡れのジュエルシードが収まっているのを見つけた。
「これは」
「…今回は、あなたのものよ」
「なっ、ふざけてるのかいあんたっ!? あれだけ戦ったのに、ジュエルシードがいらないっていうのか!?」
平然と、今回の騒乱の元であるジュエルシードを放棄するリリーにアルフが怒りと、反発の声をあげた。
その声にリリーは初めて視線を純吾から彼女へと移す。見返したアルフが見たリリーの顔は、何も読み取ることのできない、能面のような顔。それはほんの少し前までの自分の主である、フェイトを見ているかのようにアルフには思えた。
「だって、今回それを封印したのはあなた達。私達は、本気でそれを奪い合うからこそ、誰が封印したかをちゃんと考えるべきじゃないかしら?
……ジュンゴが今起きてても、多分、私の意見に賛成してくれるわ」
本来の笑みからは程遠い、口の筋肉を釣り上げただけの表情を張り付けて、リリーは言う。そして、純吾に同意を求めるかのように、彼の頭を持ちあげ、自分の頬と重ねた。
「…それに」
リリーは言葉を続ける。しかし、少し前とは様子が違っていた。
「ジュエルシードがいらないか、ですって? …いらないに決まってるじゃない。それがあったせいで、この街は
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