第38話 誰が為に戦う(4)
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これは…、今まで受けた傷の痛みが和らぐ。それに、身体から力が湧いてくるような。思わず、ジュエルシードの衝撃を防いでいた手の平を握ったり開いたりしてみた。うん、これならいける。
けれども、一体誰がこんな事を? いいえ、状況からしてあの男の声の人だろうけれど、一体この力は何? 本当に、彼の使い魔は多くのレアスキル使いが揃っているとでも――
「――そこな娘御」
そんな時、あの男性の声がもう一度聞えて来た。声のする方へ顔を向ける。
そこにいたのは一匹の黒い猫。私より少し小さい位の大きさで、鎧兜に、背中には紅くて猫を模した印が描かれた旗指物を身につけている。そんな猫が、手に持った軍配を掲げながら私に話しかけてきた。
「反水不收,后悔不及(水反りて収まらず、後悔及ばず)!」
強い口調でいきなり私を叱咤した。意味は理解しきれなかったが、この使い魔が真剣に、私に何かを訴えているのが分かる。体の中に渦巻いていた疑問が消え去り、意識が彼に完全に向いた。
「なしたい事があるが故に、そこまで御身を傷つけたのであろう! 我が主とて同じだっ! 街の皆を、娘御を助けたいと御身を投げ出された、その御覚悟を一秒とて犠牲にしてくれるなっ!!」
そして知った、彼がどうしてこんな行動をとったのかを。
…色々と、言いたい事、聞きたい事がまた生まれる。けれども彼が言った通り、まずはジュエルシードを封印しないといけないと決意する。
男の子――ジュンゴが、自分の身を盾に私にくれた時間を無駄にしないために。
私は彼の背中に守られながら、再び封印魔法を使う。少しでも早く暴走が収まるように、目の前の彼の傷が、少しでも小さいもので済むように祈りながら、持てる限りの魔力を封印魔法に注ぎ込んでいった。
◆
段々と天を突く光の柱が短くなっていく。それと同じくして、ジュエルシードの暴走も収まり、放つ衝撃や光が段々と小さくなっていった。
「ん…。良かっ、た」
光が収まったジュエルシードを手のひらに握りしめたまま、純吾は満足げに呟く。けれどもそこで体力の限界が来たのか、そのまま倒れ込んでしまう。
カランとその手からジュエルシードが零れ落ちる。
本来なら青い輝きを放つはずのそれは、まだらに鈍く光る、赤い色をしていた。
同時に現界させるほどの力を保つ事ができなかったのか、駆け付けようとした純吾の仲魔が消えた。最後に見せたその顔は、ヘケトにしてもネコショウグンにしても、忸怩たる思いを滲ませるものだった。
「あ…、じゅ、ジュンゴ!?」
「ジュンゴ君っ!?」
その代わり駆け寄ったのは、封印魔法を終えたフェイトと、結界を保ち終えたなのはだ。フェイトは魔法陣を前に跪いていた身体
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