第38話 誰が為に戦う(4)
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か、防御魔法による拘束も無くなったジュエルシードは辺り一帯を破壊し尽くすんだ。
(……ごめんなさい。本当に、ごめんなさい)
自分でも気付かないうちに、そんな弱気な事を思ってしまう。
だって、私達の都合で暴走させたジュエルシードを御しきれなくて。その結果、何も関係のない人達まで巻き込むことになってしまって。
私達はなんて無力なんだろうって、そんな事実をまざまざと見せつけられてしまうのだから。
(フェイト! しっかりしておくれよぉ。このままじゃジュエルシードの封印どころか、あんたの安全だって――)
アルフが私の弱気を察知して励ましてくれる。
けど、ごめん。もう、耐えられそうにないの。ジュエルシードが私の手の内で激しく暴れている。今にも防御魔法を完全に貫通してきそうなんだから。
あぁ、けれども。
(悔しいなぁ…)
後少し。後少しだけ封印魔法に力を注ぐことができたら、この状況を変えられるかもしれないのに。そこに手が届かない事が悔しくて、巻き込んでしまった人たちに申し訳ない。
あぁ、あぁ。本当に、何でもいい、誰でもいい。この状況を、無関係な人を傷つけてしまいそうなこのジュエルシードを封印する力を、私にください――
「ヘケトっ! ネコショウグン!――!?」
その時、後ろから力強い声が聞こえてきた。そして何が来たのかと判断できないまま、身体に一瞬の浮遊感を感じ、地面に尻もちをついてしまう。
「フェイトっ!?」
声の方を向くと、狼の姿のアルフが走ってくるのが見える。
えっ、どうしてアルフがいるの? さっきまで防御魔法の魔法陣の中で、姿なんて見えるはずないのに。じゃあ、私防御魔法の外に? じゃあ誰が今、防御魔法を代わりに展開してるの?
顔を正面へ、防御魔法を展開している方へと向ける。
そこにいたのは、私より背の高い、さっきまで私達と戦っていたはずの男の子。
「…今なら、封印に全力を注げる」
首だけを後ろに向け、囁くような声で男の子が言った。
確かにその通りだろうけど、それよりもまず、私の中に疑問が渦巻いた。どうやって私とあなたの位置を入れ替えたの? あなたに不思議な力があるのは知ってたけど、ジュエルシードに防御魔法もなしに耐えられるはずなんてないはず。
あなたと私達はさっきまで争ってたはずなのに、どうして助けてくれたの?
「急いで」
けれども男の子はそんな私に答えてはくれなかった。短くそう言い残すと顔を正面に戻し、ジュエルシードの衝撃を全身で抑え込むように抱え込む。
「災厄より世を救う、人々の盾たる“英雄”の力を汝らにっ!」
その時、アルフとは反対の方向から凛とした男性の声が聞こえ、同時に、光が男の子や私に降り注いだ。
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