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変人だらけの武偵高
2話
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スピードで自転車が加速。セグウェイを振り切り、遥か彼方へと逃走を開始した。
「なんだこれ? なんだこれぇぇぇぇぇぇぇぇ?」
焦げ臭い匂いがキンジの鼻をついた。後輪が煙をあげている。あまりの速度に、タイヤが摩擦熱で擦り切れているのか。ちなみに前輪はちょっと浮いててそれどころじゃない。
『はっはっはっは! 驚いたかキンジぃ! それはな、武偵殺しっつー犯罪者対策に作った超加速装置だ! どうだキンジ、さいっこうの風を感じるだろ?」
「てめえ武藤! 人のチャリになんつー改造施してくれてやがる! 修理費払わねーからな!」
通信でなく録音であるということも忘れて叫ぶ。勿論、武藤の声は取り合ってくれない。
『あ、ちなみに赤のボタンは押さねー方がいいぜ。自爆スイッチだから、それ。まあ、武偵殺し本人が出張ってきたら、道連れにでもしてやれ』
「てめえもか! てめえも俺のチャリに爆弾積んでやがんのか! 余計なことばっかりしやがって……生きて帰ったらぜってー殺す!」
恐らく、自転車に別の犯人二人から爆弾を仕掛けられたのなんて人類史上キンジが初だろう。
涙目になりながら、ほぼ漕ぐ必要の無くなった自転車のバランスをしっかり取る。
『じゃ、存分に風を感じてくれ。じゃあな』
「おい待て、言いたいことだけ言って帰るな! これどうやって止まんだよおい?」
前輪が浮いている以上、ブレーキは意味を成さない。というか、この速度でブレーキを掛けたら慣性で前に吹っ飛ぶ。
飛び降りるのも難しい。この速度なら分からないが、爆弾二つを積んだ自転車が近くに倒れればお陀仏だ。
(どーすりゃ良いんだよ、これ……)
キンジは、軽く生存を諦めた。
全力を出せていたなら、この状況も打開出来たかもしれない。が、今更そんなことを考えてもどうしようもあるまい。
「ああ、悪くない人生、だったのかなあ……」
そんな言葉が、口をついて出る。
しかし、天はーー彼女はそれを許さなかった。
「武偵憲章第10条! 諦めるな、武偵は決して諦めるな!」
凛と響くは、鈴の音のように高い声。
それは空から降り注ぎ、キンジの視線を空へと押し上げた。
とんでもないスピードで走る自転車は、景色の全てを置き去りにしていく。そんな超速世界の中で、キンジは確かに見た。
ピンクブロンドの長髪を二本に束ねた、赤い瞳を持つ少女を。
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