英雄の暗躍
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自然と言う言葉を聞いて、イメージするのはどういった風景だろうか?
周囲の全てが緑に覆われた森の中だろうか?
それとも心をいやすような水の流れる音が聞こえる川だろうか?
地平線を望む大海や雄大な姿の山もありだろう。
ただし、我々の想像する自然と言うやつは大抵の場合“人間にやさしい”自然と言う但し書きがつく。
誰だって虎視眈々と獲物の隙を狙う肉食獣や足場もないほど密集した身の丈ほどもある草の中に突っ込んで行きたいというモノ好きはあまりいないだろう。
たとえそれが正しく“自然”の姿だとしても…人間と言うのは自分勝手なものだ。
昼間でもそんな有様な自然は、日が落ちると共にその驚異、危険性が跳ね上がる。
蔵闇はその先にいる牙の白さを隠し、危険の察知を困難にする。
具体的には、油断が即、夜行性の獣の餌に直結する。
何が言いたいのかと言えば、夜の自然の中に飛び込んで行くような奴は自殺志願者か救いようのない愚か者か、あるいは…。
――――――――――――――――――――――
夜の闇に深さを増した森の中を走る影がある。
動物よりも速い動きだが、地面を蹴る足は二本だ。
性別は男、誰が見ても身なりの良いと評するであろう恰好は身分の高さを表している。
少なくともこんな場所を走り抜けるための服ではないが、枝に引っ掛かる事もなく、寝に足をかける事もない。
単純な熟練以上の“ナニカ”を感じさせる動きと、西洋風に整った金髪と碧眼の顔に浮かぶうっすらとした笑いがうすら寒い何かを見る者に抱かせる。
「…あん?」
そのまま森を駆け抜ける勢いだった男の足が止まる。
男がいきなり止まった理由は、視線をたどれば文字通り一目瞭然で知れる。
進行方向にある木の下に、自分以外のモノ好きの姿を見つけたからだ。
「手前…何もんだ?」
「…秋晴」
誰何の問いかけは短く返された。
秋晴は何時も通りのラフな格好で木にもたれかかり、軽く瞼を閉じている。
「お前“も”転生者か?」
彼が現れる理由は転生者、トリップした人間の前だけだ。
故に、男もまたそのどちらかである証明である。
「持古中、お前こそこんな所で何をしているんだ?」
「転生前の名前で呼ぶなよ」
どうやらアタルと呼ばれたこの男は転生者のようだ。
前世の名前が気に入らないのか、それとも修正を同じ転生者と思って気を抜いているのか、どちらにしても昔の名前で呼ばれる事に抵抗があるらしい。
分かりやすい不満顔だ。
「今の俺はウインド・ド・ラ・ウィンドウズだ!!」
「そんな事はどうでもいい」
その名前の何所に自信を持っているのか知れないが、自信満々に自己紹介をした中の言葉を秋晴が一刀
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