英雄の暗躍
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ったのだろうが、失敗してしまった以上は秋晴のターンだ。
「顔を見せろ!!」
気合いと共に一閃、愁島に構えた手を右から左に振り抜けば、障害物の木が同じ長さに切りそろえられ、視界が一気に開ける。
「…逃げたか」
倒れた木の枝と葉の間からの不意打ちに警戒したが、しばらく待っても何も出てこなかったので秋晴は構えを解く。
見れば中の姿もない。
どうやら秋晴をどうにかしようと言う気は最初からなく、中を連れて逃げる事が目的だったようだ。
あの突拍子もない攻撃とそれに続く連続攻撃は秋晴の意識に隙を作るための奇襲だったのだろう。
それにまんまとはまってしまった形だが、悔しさよりも別の考えに溜息が洩れる。
「何でここでオリ主が出てくるんだよ…」
この世界に中以外のオリ主はいない。
大母神をバックに持つ秋晴の情報網はその点に置いて完璧だ。
だが、戦闘中だったとはいえ秋晴に気づかれず近づく事や、さっきの掛け声を考えるに他のオリ主がいるとしか考えられない。
おそらくは世界を移動する能力を持ったオリ主と某海賊王の能力を持ったオリ主の二人以上がこの場に来ていたのだ。
この短時間で秋晴にも気取られず逃げおおせるなど、世界を渡るくらいの事をしなければ不可能だろう。
任意の世界渡りは神クラスの能力がなければ難しいはずなのだが…一旦、大母神の元に戻って相談する必要がある。
後は…。
「…何で他の世界のオリ主がこの世界のオリ主を助けるんだ?」
その点だけは全く分からないし、想像もつかない。
これだけ計画的な事をやらかして置いて、秋晴が何者か知らなかった…と言うわけでもないだろう。
「…嫌な予感がする」
具体的な事実も事情も五里霧中、なのに不安要素だけは増えていく。
何か一筋縄ではいかない事が起こりそうな予感に、秋晴の溜息は深い。
――――――――――――――――――
その後、この世界に置いてウィンド・ド・ラ・ウィンドウズの姿を見た者はいない。
様々な革新的な考えや技術を持っていて、未来の栄光を羨望されていた彼の失踪は当然のごとく問題となった。
捜索隊の編成も考えられた物の、それに関しては勅命が出る前に立ち消えとなる。
彼の失踪からほどなく起こった諸々の騒動の為に、それ所では無くなったためだ。
その中心に、救出された少女と主人公達がいたのは言うまでもない。
次々に襲い来る敵や試練を乗り越え、彼等は英雄と呼ばれる事になるが、そのころにはもはや、ウインド・ド・ラ・ウインドウズの事を思い出す者はいなくなり、僅かな記録の中にその名前が残るのみとなっていた。
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