英雄の暗躍
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損させたはずの相手がまだ粘るのが意外だったのか、秋晴も軽く目を丸くしていた。
「ああ…使徒の自己修復と能力増加?」
「あたりだよくそったれ!!」
中の右手から光の槍が、左手から光の鞭が放たれた。
共に音速をこえた速度で迫るそれを、秋晴は軽く見を捻る事でかわした。
中の様なとっさの避けではない、きちんと認識した上での余裕をもった回避だ。
「おいおい、ここが異世界だからって自然破壊は良くないと思うぞ?」
「黙れ!!」
避けた槍と鞭が背後に在った木を貫き、切り裂くのを気にする余裕さえある。
あからさまな挑発だが、余裕をなくしかけている中にはそれを聞き流す事が出来ない。
連続してやりが付きこまれ、鞭が空間を薙ぐがそれ一つとして秋晴にかする事さえない。
「これならどうだ!!」
言葉と共に、地面が消えた。
正確には中の影が広がり、地上に在る者を飲み込み始めたのだ。
昼間ならその異常に気がついたかもしれないが、現在は真夜中に近い時間である。
しかも灯りになる者が星と月しかない状況ではそれに気が付くのも困難だろう。
「虚数空間で死ね!!」
「やだね」
「何!?」
中の見ている前で、秋晴は拳を振りかぶる。
睨むのは中…ではなく、自分を飲み込も始めた足元の影だ。
「何をするつもりだ!!」
「すぐに分かるだろ!!」
行動が答えとなった。
足下に振り下ろされた拳は、本当ならそのまま足と同じように呑みこまれてしまうはずだったが…そうはならず、ガラスのように影の表面にひびが入る。
「い、ギヤぁぁ!!」
いきなり苦しみ出したのは中だ。
ガラスが割れるような音と共に、まるで地面にたたきつけられた蜘蛛の巣のようなひび割れが中の顔面に走る。
中がつかった使徒の能力は極小の体積を横いっぱいに広げて相手を飲みこみ、巨数空間に放り出すという物だった。
この場合、影が本体となり、本体に見える物こそが三次元に投影された影と言う代物だ。
中が多少冷静さを取り戻していたのは、影と本物が入れ替わっていたからに他ならない。
影にいくら攻撃を受けようと、中は文字通り痛くも痒くもないのだから…そんな目論見は、足元の影を破壊した秋晴に痛みと共に甘いと叩きつけられた。
ダメージが大きかったのか、それともこのままでは身が持たないと思ったかしれないが、中が能力をキャンセルする。
「……さて?」
影が消えて足の自由を確認した秋晴が改めて中を見れば、割れた顔面を抑えながら中が後ずさる。
「お、おま…何で、どうやって虚数空間を!!さっきのATフィールドだって」
「…ああ、それなら多分、俺の能力に“神殺し”の属性がついているからだな」
「なん…だと…?」
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