第二幕その二
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第二幕その二
その立ったままで。二人は話していた。
「古い言葉にあります」
「古い言葉に」
「そうです。賢い妻は稀だと」
「そうなのですか」
「実際に滅多にいません」
瞑目してみせての言葉である。
「これは」
「それはそうでしょうか。では貴方は」
「私はですか」
「愛というものは」
「何もかも知りません」
まさにそうだというのである。
「本当にです」
「それではです」
マルタはそのメフィストに対して問う。無論彼が何者なのかは知らない。
「魅惑が欲しくて胸が詰まり夢を見てその身を焼かれたことは」
「ありません」
「またそれは」
そんな話をしていた。その時にはであった。
マルゲリータは恍惚とさえなって。ファウストに対して問うていた。
「エンリーコ様」
「何でしょうか」
「貴方は神の教えについてどう思われているでしょうか」
「そのことですが」
実際の年齢を感じさせる、だがマルゲリータには決してわからないことで答えた。
「明晰な心を持っておられる方の信仰を惑わしたくはありません」
「信仰をですか」
「そうです。私は愛する人に全てを捧げます」
「まずは信仰です」
しかしマルゲリータは純粋に言うのだった。
「それではないのですか?」
「私にとってはです」
今の彼の言葉はであった。
「聖人達の言葉ではなく」
「その言葉ではなく」
「それは今の私にとっては私の求める真実に対するからかいです」
そんなものでしかないという。
「また誰なら私は神を信じていないと言えるまで大胆なのでしょうか
「それは」
「私は貴女に求めます」
マルゲリータをじっと見詰めての言葉である。
「先ず心を満たされることを」
「それをなのですか」
「そうです、それをなのです」
こうマルゲリータに話す。
「言葉に尽くせない真の愛の鼓動をです。そして」
「そして?」
「それからその法悦を」
「法悦を」
「自然とも愛とも神秘とも」
言葉を続けていく。
「生命とも神とも呼べばいいのです」
「そうされよというのですか」
「そうです。実感に比べたら」
「それと比べたら」
「名前や言葉は煙や噂に過ぎません」
「左様ですか」
「それで」
今度はマルゲリータ自身に問うた。
「貴女は御自身の家ではどうなのですか?」
「私の家ではですか」
「はい。そこではどうなのでしょうか」
「私の家は小さく」
そう話していく。
「そして菜園や食事や家計を見ています」
「そういったものをですか」
「常に見ています」
そうだというのである。
「私はです」
「左様ですか」
「糸車も使います。母は厳しいですがそれでも幸せに穏やかに過ごしています」
「では」
糸車と
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