第三十五話 帝国暦四百九十年の始まり
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せるためです」
つまりヒルダの俺に対する評価はロイエンタールよりはまし、そんなところかな。いや待て、ミュラーを俺の後ろに置いたのはこの女だった。という事は彼女も俺を疑っているという事か……。これは忠告なのか、それとも警告なのか、確認する必要が有るな、間違うと命取りになる。
「総参謀長閣下も私を疑っておいでですか。ナイトハルトを私の後ろに置いたのは総参謀長の配慮だと聞きましたが」
「いいえ、疑ってはいません。しかし彼らにも配慮しなければならないのです。御理解頂けませんか?」
「……」
御理解か、どうやら警告では無く忠告という事か。敵ではないと見て良いのかな……。
「黒姫の頭領から艦隊の順番を変えて欲しいと要望が有った時には頭領は全てご存知かと思ったのですが、そういうわけではないのですね」
「部下を唆す者が居るとすれば地球教かと思っていました。後は憲兵総監ですね。まさか帝国内の権力争いが絡んでいるとは……、面倒な……」
ヒルダが頭を下げた。
「頭領には申し訳ないと思います。ですがどうか御自愛下さい。帝国には、ローエングラム公には黒姫の頭領の協力が必要です」
「……御厚意感謝します、気を付けましょう」
俺が謝意を表するともう一度丁寧に頭を下げてヒルダは立ち去った。
やれやれだ。とんでもない状況だな。敵と戦う前に味方の内部で勢力争いが生じている。まあそれだけ同盟に比べれば帝国が有利だということだろう。勝つ事よりも勝った後の事を考えているというわけだ。しかしな、有利では有るが楽に勝てるとは限らん。それが分かっているかな。
「エーリッヒ」
考え込んでいると声をかけてきたのはミュラーだった。一人じゃない、周囲にはミュラー艦隊の人間が何人か居る。オルラウ、ヴァルヒ、シュナーベル、ハウシリド、ドレウェンツ……。軍人ってのはどういうわけか直ぐ固まる。パーティなんだから自由にすればよいだろうに。
「随分と総参謀長と話していたようだが」
「見ていたのか」
「ああ、深刻そうだったんでね。声はかけなかったんだが……」
「遠慮しなくてよかったんだ、大した話はしていないんだから」
「……そうか」
正直に話そうかと思ったがオルラウ達が居る、ミュラーを困らせるのは止めた方が良いだろう。会場では何時の間にかシャンパン、ジュース等の飲み物が用意されていた。そして人も増えていた。気付かなかったな、どうやら俺は周囲に注意を向ける余裕を無くしていたらしい。
入口の方がざわめくとラインハルトが会場に入って来た。傍にはシュトライト、リュッケが居る。ヒルダがラインハルトに近付いていく。そうか、あれは偶然ではなかった。ヒルダは俺と話すために先に来たのだ……。無性に腹が立った、間抜けな自分に、そして馬鹿共に……。
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