第百二十六話 溝その四
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「あれはまさに怨霊じゃ」
「そうした者でしたな」
「勘十郎が操られたのじゃ」
織田家の重鎮であり今も都を預かる彼がだというのだ。
「並の者ではない」
「あの者はまさに怨霊でしたな」
「妖術も使いましたし」
「この世にはああした者もおる」
異形魔性の者がだというのだ。
「そうした者にはそうした結界も必要じゃ」
「闇を退ける結界ですか」
「それが」
「それを安土にも置きたい」
これが信長の考えなのだ。
「是非な」
「では文字を」
「いや、より強いものじゃ」
そうした結界をだというのだ。
「それを置きたい。確かな、そして多くの加護をな」
「そうなりますと」
その話を聞いてここで言ったのは竹中だった。
「神仏の直接のご加護になりますか」
「そうじゃな、そうなるやもな」
「まだ都の近辺には廃れた寺社が多くありますが」
「そこから借りるか」
「そうされますか」
「神仏は多ければ多い程よい」
本朝独特の考えだが信長もこの考えである。
「そうじゃな、地蔵菩薩の像なり墓石を集めるか」
「そうしたもので、ですか」
「結界を築きたいがな」
「では」
小寺も頷く、他の家臣達もだ。
「誰も崇めることのなくなった地蔵や墓石をそのまま寂れさせるよりも結界として使われて」
「護りにされますか」
「そういうことじゃ、あと結界にも細工をしておこうか」
信長は考える顔のまま話していく。
「それはな」
「ですか、それでは」
「無論武の守りも固める」
これは当然のことだった、それを忘れる信長ではない。
「山全体を城として何重にも石垣と城壁を築く」
「それを城の守りとされますか」
「天主も置く」
これもだというのだ。
「結界にもなく壮麗なものをな」
「どういった天主でありましょうか」
平手は厳かな態度で問う、今も健在であり重臣筆頭を務めている。
「それは」
「今考えておる、その外観と内装はな」
「殿のことですからまた派手だと思いますが」
諌臣としてこのことを言うのは忘れない、だがだった。
「ですが結界のことを考えますと」
「派手でもよいな」
「むしろ派手であった方が中に色々と入りますな」
「うむ」
まさにそうだというのだ。
「それも考えておる、天主には結界の要を置く」
「ではその様に」
「安土の話はとりあえずここまでとするぞ」
充分話したと考えそのうえで出した言葉だ。
「次の話じゃが」
「朝倉のことでありますが」
島田が言ってくる。
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