第百二十六話 溝その二
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「あと出来れば攝津にな」
「摂津にですか」
「あの国にですか」
「うむ、安土と同じだけの大きさの城を築きたい」
こう言ったのである。
「出来ればだがな」
「あの国にもですか」
「城を傷枯れたいのですか」
「そうじゃ。安土、それに摂津とでじゃ」
この二つの場所を以てだというのだ。
「武威での都の護りともしたいのう」
「既に都には比叡山と高野山があります」
今度は村井が言う。
「護法は万全と言われていますが」
「しかし何度か乱も起こっておるな」
「はい、その通りです」
「都の結界は万全と聞く」
このころでも知られている、都はただそこにあるのではないのだ。
それで信長もこう言うのだ。
「しかしそれでもじゃ」
「乱が起こりですか」
「あやかしの話も多いのう」
「それには話が尽きませぬ」
村井はこのことを話してだった。
「それでなのですか」
「武によっても都を乱させぬ」
そうした意味もあるというのだ、居城の建築は。
「こうも考えておる。無論政の為でもあるがな」
「ではその政の為にもですか」
「摂津においても城を」
「あそこには石山があるがな」
本願寺のことである。
「それでもじゃ」
「場所としましては」
佐久間が申し出る様にして言ってきた。
「その石山御坊の場所が一番いいですな」
「あの地じゃな」
「場所が広く巨大な城を築けます」
「しかも川も城の守りに使える」
「川、即ち水の便もいいですし」
このこともあった。
「摂津ならばあの地でしょう」
「そう思うがしかし本願寺がある」
その石山御坊の主である。
「あの寺とは揉めてはおらぬしな」
「今後もですか」
「検地をして荘園を除きじゃ」
そして檀家を入れさせる、だがだというのだ。
「こちらから仕掛けるつもりはない」
「ですか」
「穏健に済めばそれでよい」
信長は基本的にこうした考えだ、本願寺だけでなく他の家や寺社に対してもそれは同じ考えであるのだ。
だからここでもこう言ったのである。
「本願寺にしてもじゃ」
「では本願寺はあの地からは」
「ことがなければな」
それならばというのだ。
「あの地のままじゃ」
「では何処に城を築かれますか、その場合は」
「姫路じゃな」
信長の口から新たな場所の名前が出た。
「あそこじゃな」
「姫路、播磨のですか」
「あの国にですか」
「摂津が駄目ならばあの地じゃ」
また言う信長だった。
「あの地に城を築く」
「そのうえで都の護りとされますか」
「それぞれ」
「そのつもりじゃ。それと東国にも築く」
そこにもだというのだ。
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