第四幕その七
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第四幕その七
そして近くに青い海が見えそこから濃い青の髪の半裸の美女達が来ていた。悪魔はそれを見せたうえでファウストに囁くのであった。
「御覧になって下さい」
「何をだい?」
「この美しい世界を」
彼が今出した世界をだというのだ。
「この世界をです」
「いや、今の私は」
「愛の歌を聴くのです」
その美女達の愛の歌をである。実際に彼女達は艶かしい身体で艶やかな歌を歌っていた。
「かつて貴方が楽しまれたものを」
「そう、かつてだ」
「今もです」
そうだというのである。
「ですからこの世界へ」
「主よ」
「聖人達の主よ」
また天使達の声が聞こえてきた。そして彼等もまた姿を現わしてきた。今地上は悪魔が出した美の世界があり天はその天使達が輪になってそのうえで光の中で歌っていた。そしてファウストはそれを見てである。
「止まれ」
「止まれ!?」
「御前は美しい」
ついに言ったのである。
「御前は美しい」
「馬鹿な」
ファウストの見ているものを確かめてだ。メフィストは唖然として呟いた。
「何故だ、何故こんなことが」
「そう、御前は美しい」
また言うファウストだった。
「永遠に」
「翼のある黄金の天使達の主よ」
「輝かしい主よ」
「そうなのだ」
ここでファウストは手を伸ばした。そのうえでそこにある福音の書を取ってだ。そのうえでそれを手に持って。
「これこそが私の砦なのだ」
「あれだけの快楽を味わいながらもだというのか」
「慈悲深い神よ」
ファウストはその書を手に言うのだった。
「私を貴方の下へ」
「全ては終わったというのか」
メフィストも今の状況を認めるしかなくなってきていた。
「まさか」
「聖なるかな、聖なるかな」
「永遠の宇宙の調和よ」
「そう、調和なのだ」
ファウストは輝く彼等の歌声を聴きながら呟く。
「全ては。創造と調和と」
「破壊を否定するというのか。その美しいものを」
「私は賛歌を愛する」
彼が次に愛すると言ったものはこれだった。
「そう、それをだ」
「さあ、祝福を」
「これで」
天使達はあるものをファウストに降り注いできた。それは黄金や青の羽根達であり紅や白の薔薇の花びら達である。そうしたものを降り注がせてきたのである。
ファウストはそれを静かに受けている。メフィストはもう観念するしかなかった。
「思えばこれも運命なのか」
その羽根と薔薇の花びらを受けるファウストを忌々しげに見ながらの言葉である。
「全ては」
「私は今からそこへ」
ファウストは上を見上げたまま静かに微笑んでそのうえでゆっくりと崩れ落ちた。その顔は穏やかであり満ち足りたものであった。
その彼をだ。降り立った天使達が輪になって囲んで、である
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