Episode2 《流し》
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す。
その間にこの状況をどう収めるか思考する。圏外だからこちらから向こうには攻撃を加えられない。それについては向こうも同じはずなのだが、興奮状態の相手に攻撃の終了を期待は出来ないだろう。
いや、少し待て。最初もかなり興奮して襲い掛かって来たが、それでも俺の言葉の脅しに反応したんじゃないか?なら、こいつはこの世界を《デスゲーム》と強く意識している奴だ。
……あまり気は進まないが、現状をどうにかするにはこれしかない。
振り回される斧を凝視して軌道を読む。後ろに乗っていた体重を前に移動させ
「うらぁッ!」
気合いを乗せた切り上げをハズキの斧へぶつけ、その方向を上へ変える。
交差した視線の先でハズキの表情が驚愕、それからゆっくりと笑みへと移る。高々と掲げられた斧にソードスキルの光が宿った。その動作がやたらとゆっくり見えた。これが集中しているということなんだろう。無意識のうちに口元に自嘲の笑みが浮かんだ。
……アインクラッド第一層の対人デュエルで敗れたあの日から、ずっと考えていた。あの瞬間何が起きたのかを。俺の《ホリゾンタル》は真っすぐにアキへと叩き込まれていたはずだった。それが気付けば地面に剣を打ち付けていた。
少し疑問に思ったのは、垂直打ち下ろしのスキルを放った剣が若干ではあるが、俺の体の中軸より《左》にズレていたこと。ここから俺がされたことを予想すると……。
ハズキの斧が振り下ろされる。恐怖に体が萎縮しそうになるが、自分に鞭打って斧を凝視、軌道に片手剣を合わせる。
斧と剣がぶつかった。ググッと強い力で押して来る斧を意識したところで剣を少し引いた。当然さらに押し込まれるが、
(ここだ!)
剣が15度ほど傾いたところで手首を強く剣を握る。ジャジャッと嫌な音を立てながら斧が刀身を滑る。力の向きを変えられた斧が俺に一切触れることなく地面に突き刺さった。
おそらくアキに俺がされたのがこれなのだ。俺の中で勝手に《流し》と呼ばせてもらっている。
起きたことが分からずハズキが斧を振り切った形で固まっている。まぁ仕方ない。これは本当に一瞬の出来事だから。固まったままのハズキの首元に剣の切っ先を向ける。
「…ナメるなよ。お前のHPくらい、今ここで全損させてやれるんだぞ」
もちろんこれは、はったりだ。さっきの《流し》だってほぼ偶然決まっただけだし、スピード型非力アバターの俺じゃ全損の前に技の打ち合いで負ける。
それでも脅しは十分効いたようだ。ハズキの体がガタガタ震える。
「ひ、ひぃぃ…」
「今なら見逃してやる。…行けよ!」
「うわぁぁ!」
ハズキが一目散に走り去った。あまりに急いでいたせいか、斧はその場に放置されている。持ち上げてみようとしたがピクリとも動か
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