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ソードアート・オンライン 奇妙な壁戦士の物語
第四話 後・ボス戦攻略
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、狂気に呑みこまれていたことだろう。

 周囲からはまるでBGMのようにチーターだ、ベータのチーターだ、それを二つ合わせて《ビーター》だ、などという声が聞こえてくるが、今の少年にはそれをしっかりと聞く余裕などは存在しなかった。

「・・・・・・《ビーター》、いい呼び方だなそれ」

 しかし、あの黒髪の少年の声が聞こえると――何故かそちらに、耳を傾けてしまう。きっと、これから一緒の境遇――形は違えど、それに立たされる者同士で、彼の事が気になってしまったのだろう。

「そうだ、俺は《ビーター》だ。これからは、元テスター如きと一緒にしないでくれ」

 この言葉により、今この世界に居るベータテスターたちは二種類のカテゴリに分けられた。大多数の《素人上がりの単なるテスター》と、ほんの少しの《情報を独占する汚いビーター》に。

 これは、大きな変化だ。新規プレイヤーの敵意は、全て後者のビーターに向けられる。逆に、前者の素人上がりのテスターは、ほとんど恨まれずに済むはずだ。

 ――まったく、ベータテスターたちの救世主もいいところである。

 少年の口端が、不意に吊り上る。体の震えも、止まっていた。きっと、この声の主のその心意気に、少年は突き動かされたのだろう。罪なきプレイヤーが堂々としているのに、自分が怯えていい道理などない。怯えて停滞するぐらいなら、前に突き進め、と。

 途端、少年の心の中の暗雲が晴れた気がした。男への負けん気と黒髪の少年の行動と境遇、その二つによって少年は立ち直ることが出来た。

「二層の転移門は、俺が有効化(アクティベート)しといてやる。この上の出口から主街区まで少しフィールドを歩くから、ついてくるなら初見のMobに殺される覚悟しとけよ」

 と、不意にすぐ横に黒髪の少年の姿があった。彼は主なき玉座の後ろに設けられた第二層へと繋がる扉を押し開けた。

「・・・・・・同じ境遇に立つ者同士、頑張ろうや」

 少年が黒髪の少年に声を掛ける。同時に、少年はフレンド申請を彼に送る。

 黒髪の少年は一度こちらを見てから一瞬、驚いたような目をしていたが、すぐに苦笑を浮かべるとフレンド申請を承認する。

「よろしゅうな、キリト」

 少年はそのプレイヤーの名前を呼ぶ。屈託の無い笑顔を浮かべると、黒髪の少年は一度頷き、

「あぁ。よろしくな、アキヤ」

 二人の間でしか聞こえない小さな声でお互いに挨拶を交わす。それが終わるや、黒髪の少年ことキリトは第二層へと繋がる狭い螺旋階段を上って行った。

「はぁ・・・・・・今日ほど濃密な一日は、ほんま久しぶりや」

 はぁ、と潤いに満ちた溜息を吐いて、少年ことアキヤは玉座に背中を預ける。

 やはり、この世界の監視役になって良かったかもしれ
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