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王道を走れば:幻想にて
第四章、その8の1:示す道
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く持ってこい!!見ているのは分かっているんだぞ!!」「愚図共が群れても所詮愚図だ。皆殺しにしちまった方が早いぜ」
「面倒なんだよ、一々殺すのが!おらぁっ、さっさと出せ!!村人殺すだけじゃ止めねぇぞ!男を殺して女を犯してっ、子供を生きたまんま食うのだって辞さなーーー」
 
 野暮な突っ込みを他所に更に吠えようとした瞬間、闇夜を裂くような高調子の音が鳴り、それにやや遅れて「ぶすっ」と肉に突き刺さる音がした。仲間らがそれに反応して振り返る。大男の頸動脈に寸分違わず、一本の矢が突き刺さっていた。徐々に鮮血が傷口から零れ、男はわなわなと表情をひくつかせながら落馬する。罠だ、と誰かが叫んだがそれを掻き消すように幾十もの矢が飛来する。燃え盛る家に突き刺さる一方、数本の矢が盗賊らの身体や馬体を真っ直ぐに射抜いて深い傷を負わせ、鋭い絶叫を上げさせた。盗賊等は此処に至って、エルフ達による奇襲を受けたのだと悟り大きく動揺した。
 矢の雨は森より飛来したものであった。確かな成果を得たに関わらず、二十人ばかりの弓兵に混じって矢を射たユミルはいたく不満げであった。己が最初の一矢で確実に一人を仕留めたのに対して、これだけの人数でも僅か三人しか射抜けなかったのだ。しかも見た所致命傷であるとは言い難く、思わず彼は罵倒を吐いてしまった。

「下手糞が!どこを狙っている!?」「普段槍か鍬しか持たない奴に期待すんなよ!!お前ら、細っこいモンなんて狙うな!腹狙え、腹!!」

 隣で弓を放つパックはそう叫ぶ。二度目の矢雨が降り頻り盗賊等も何とか態勢を立て直してそれを受け止めたが、今度は一名、まともに胴体に数本の矢を受けて地面に落ちた。これこそがユミルや弓兵らが求めていた最良の討ち方であり、弓兵隊の指揮はぐんと高ぶった。
 このまま弓で嬲り殺しにされるのは癪であるとばかりに、盗賊等は反抗の兆しを見せ始めた。相手が僅か二十数名であると見て侮ったのか、負傷に問わず戦意に満ちた咆哮を漏らした。その様は蛮人にしては勇壮であるが、しかし不意打ちを食らってしまえば元も子も無い。焼け落ちる寸前の家屋から突き破るように、数人のエルフ兵が現れた。樫の木を利用した防火用のマントを脱ぎ捨てながら、後背より盗賊等が乗る馬体に思い切り剣を突き立てた。

「ぬおおおっ!?」

 激痛で馬が高々しい悲鳴を漏らし、唸り声を上げながら幾人の男らが落馬して不運にも二人の男が首や頭を地面に打ち付けた。ぴくりともしなくなった二人を横目に、盗賊等は何時の間にか前後を包囲された事に浮き足立つ。口から毀れるのは狼狽の息のみであり、臆病な気質の者は既に脱出路へと馬の頭を向けていた。それを逃がすかとばかりにユミルとパックの矢が走り、男の脇腹と右太腿を射抜く。燃え盛る家屋ががらがらと騒音を立てながら崩落し、一段と大きな火を噴いた
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