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王道を走れば:幻想にて
第四章、その8の1:示す道
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は此処から20里(約78km)離れた平原に陣取っている。数は多くて四百か、或は五百といった所だ。少な目に見積もっても俺達の二倍の数。その上賊軍は僅かながら騎馬兵も率いているようだ。反撃として此方から打って出るのは危険だろう、というのがイル=フードの第一の結論だ」

 危機的な状況なのに冷静な判断だとパックはほぉっと息を吐いた。上の連中がまともに頭を使えないというのが最も恐れていた状況だけに、感心するよりも先に安堵を覚えたのだ。それに盗賊を一目見た時から数の不利は最初から予見出来た事であり、余り驚くような結論ではなかった。
 パックは頷きながら問いかける。

「ユミル。第二の結論とかもあるのか?」
「援軍を要請する事だ。お前を解放するのと同時期にクウィス領土にも遣いが飛んでいるし、ニ=ベリにも遣いが出されている。後者はかなり屈辱的な決断だったようだが、呑み込んでもらったよ。どうにも出来ないなら仕方ないとな。
 俺達調停団は王国に仕える身ゆえエルフの指示を遵守する必要は無いが、だが盗賊を撃滅する義務はあると考えている。団員の皆もそれを納得している。よって俺達が何をするかといえば、徹頭徹尾守りを崩さないという事だ。援軍が来るまで耐え抜く」
「おい。やられっ放しって事か?・・・仕方ないかもしれないが、でも癪だな。他の突破口とかあるのか?」
「・・・先日襲ってきた賊は皆騎馬兵であったが、しかし十数人程度のものだった。此方を軽く見ている心算なのかもしれないが、それが彼らの命取りとなるだろう。昨夜から罠を仕掛けているのだ。あの見境なき暴虐の輩が絶対に手を出すような、在り来たりな罠をな」
「そうなのか。んで、どんなやつ?」「案内しよう」

 二人は廃墟から離れていく。肌寒い隙間風が吹く森の端を数分ほど歩くと、また一つ樵小屋が見えてきた。傍には小さな畑もあるようで、幾人かの者達が鍬でもって畑を耕していた。冬に備えて土を作っているのだろう。

「あの家が見えるな?」「ああ、ボロいな」
「本来あそこに住んでいた住民は避難していて、今は兵士が農民に変装して使っている。遠目からは畑を耕しているようにしか見えんだろうし、それに森の中心部からは離れている。襲うなら絶好の獲物だ」
「あれを餌として使って、盗賊を引っ掻けるつもりか。それで、引っ掛かったら包囲して、中と外から殲滅するって寸法か?」
「だからいったろう?在り来たりだって。お前にも勿論協力してもらうぞ。盗賊が襲来したら、外側から弓を射掛けて馬の脚を潰すんだ」
「・・・今一やる気が出ないなぁ。拒否権とかある?」

 飄々と言ってのけるが本心では最初から乗り気なのだろう。ただ緊張を解すために茶化しているだけに過ぎない。ユミルは背を向けて森へと歩きながら、言葉を返した。

「ちなみに褒美として
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