番外編
青騎士伝説 中編
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ミ……ホントに、大丈夫よね……また、あんなことには、ならないよね……?」
「……もち」
無表情に親指を立てる、レミ。そのまま身を翻し、颯爽と街の外、『圏外』へと駆け出していく。既にファーが飛び出して行ってかなりの時間が経っている。時間的猶予は無い。
けれどリズベットは分かっていた。どんなに平気に振舞っていても、そこに不安が無いはずがないのだ。変わらない、変わってはいけないと平常心を必死に保っているのだと。狂おしいほどの嘆きを、悲しみを、怒りを抑えて、変わらないことを自分に課しているのだと。
そんななか。
(……ファーまで死んだら……っ)
レミは……いや、レミも、壊れてしまう。リズベットが下を向き、唇を噛む。自分は、非戦闘員だ。一緒に助けには、行けない。雨が流れ落ちる頬に紛れて、一筋の涙が瞳から零れる。その俯いたリズベットの頭を、
「……心配ねーって。オレが着いていくんだ。死なねーよ。レミも……ファーも、だ。だからリズは信じて、言われた通りにすれば問題ねーよ。……あんなことは、一度で十分だ」
急に大人びた声と共に、ウッドロンが撫でた。
突然の変貌に驚いたリズベットが顔を上げた時には、
「んじゃあちょお〜と行ってきますかぁ〜! んまぁ〜ってぇ〜るえ〜みたぁ〜ん! 眼鏡なレミたんも素敵だーー!!!」
いつもの口調で駆けだす。
ますます激しくなる豪雨の中に消えた二つの影に、
「……信じてるよー! 信じてるからねーー!!!」
リズベットは声を振り絞って叫んだ。
リズベットは知らない。かつて数少ない「四属性武器」使いの男が、とあるギルドに存在したことを。その男が、かの最強ギルドの初期メンバーであり、当時は『閃光』を凌いでギルド最高DPSを叩きだし、『電撃戦』の異名をとった特攻部隊のエースだったことも。その男が、死闘の末に最強の殺人鬼に討たれたことも。
だがそれでも。
そんなことを知らなくても。
「ぜったい、ぜったい、……信じてるからーーー!!!」
リズは、彼を……二人を信じて、叫び続けた。
◆
「……」
豪雨の中、もうどれほど歩んだかも分からなくなった頃に、『青騎士』は『結界の丘』に現れた。
「頑張るねぇ。もう具足の耐久値はかなり減っているだろうし、足に連続してダメージを受け続けたことで移動制限が生じているんじゃないかな? それにあれだけの弓矢罠だ、刺さった分の鉄矢だけでも、かなりの重量になるはずだ。まともに動けないんじゃないかな?」
その彼を迎えたのは、道中しつこく音声クリスタルから話しかけてきた、あの声。
クリスタルからではない直接の声だが、あまりに雨が激しいせいで
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