番外編
青騎士伝説 中編
[4/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
手による、「武器の装飾効果」の応用だった。武器の基本的な重量ではブーメランの軌道……つまりはソードスキルを用いない、素の旋回軌道は当然一定のものとなる。それを、装飾具や木製細工で「意図的に軌道をゆがめる」。その結果生まれたのが、「レミの推測する軌道を飛ぶ武器」。
最も。
「ま〜、とりあえず今日は上出来、ってことで、ちょっと仮眠取ったら〜?」
ウッドロンが、ひらひらと手を振って笑う。
その手にあるのは。
「これだけの計算、一日二日じゃないでしょ〜? 俺にはさっぱりだよ〜」
「……ぶい。実は、向こうでは、大学の幾何学研究会の紅一点……ふわぁ……」
分厚く束ねられた、レミの手書きの計算ノート。一介の学生、あるいは大学卒業者でもそうそう簡単には解読できない、まるで暗号のような専門数字の群れが蠢いている、その紙片の束。それがレミの相当な努力で作られていることが分かるくらいには、ウッドロンは彼女のことをよく見ていた。それを気遣ったウッドロンの声に頷き、引き上げようとし、
「……? ……リズ?」
た、その瞬間、レミの脳裏にメッセージ着信を示す電子音が響いた。
層の上空には、立ち込める曇天。
上層がさぞかし激しい豪雨であることは、容易に想像がついた。
◆
リズベットは、すぐさまレミにメッセージを送った。
(ま、今回ばかりはね……)
今まで誰にも知らせないとファーと約束していたが、流石に今回は見逃すわけにはいかなかった。そもそも知らせていないと言っても、リズベットの口からファーの詳しい近況を連絡することが無いというだけで、レミだって彼が『青騎士』の正体だということはちゃんと知っているのだ。連絡を躊躇う理由はない。
「……わかった」
「ホントに分かったんでしょうね?」
辿り着いたのは、五十五層転移門広場。土砂降りの雨の中一人での待ちぼうけをする羽目になったリズベットだが、今ばかりはそんなことは気にしていられない。そしてそれはレミも同様なのだろう、今は洒落た帽子がぐしょぬれになるのも構わずに頷いてウインドウを操作する。
残念ながらレミの装備品は革製鎧が主なため、リズベットは力になれない。一応装備可能な軽装な籠手位は渡しているが、預けたアイテムの大半はファー用の替えの武器や防具達の運搬だ。彼女の装備の助けになれるのは、
「うぁっ、なんだ呼んだのリズなのっ? なーんだレミちゃんと二人きりだと思ったのに〜」
もう一人、レミと共に現れたこの男なのだ。
《木工職人》、ウッドロン。レミの古い知り合いであり、最近は彼女の「最終兵器」の作成の仕上げをリズに代わって引き受けたお調子者……なのだが、実のところリズベットは……そしてレミで
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ