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ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
番外編
青騎士伝説 中編
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ファーを煽る様に流れたその声は、最後までは続かなかった。構えた片手槍が、発信源だった音声クリスタルを的確に貫いたからだ。トラバサミの横数十センチに突き立てられた槍は一撃でクリスタルを砕き、続けてトラバサミを連続して攻撃する。

 彼の片手槍は他の装備に比べてそれほどのハイレベル品ではないが、それでも罠を破壊するくらいは訳はない。そしてそんな小手先程度のダメージでは、彼の《戦闘時自動回復(バトルヒーリング)》スキルを持ってすれば数分も待たずに回復するだろう。

 (なんの為に、こんなことを……?)

 この時彼は、「相手が自分の足取りを掴んでいる」程度の認識しかなかった。

 彼は気付かなかったが、敵は彼が思っているよりもはるかに切れ者だった。音声クリスタルが彼の到着と同時に発動したということは、彼の行動は場所だけでなく時間までも読まれていたということだた。そしてトラバサミは、ダメージでは無く、別の狙いを持ってのことだった。

 彼は、気付かない。
 しかしそれは、彼にとっては利点だった。

 ごちゃごちゃ余計なことは、考えない。
 自分は、ただただ相手を、敵を、貫き、砕くだけの存在であればいい。
 彼の槍は必要以上の焦りなくトラバサミを砕き、彼は再び進軍を始めたのだった。





 「ふぅ……」

 深い、しかし満足げな溜め息をついたのは、レミだった。
 周囲の無数の的には、過たず彼女の放ったブーメランが突き刺さっていた。

 「……どう?」
 「ひゅ〜! さっすがレミたん。これはまねできないね〜」

 その状況を、ウッドロンが口笛を吹いて褒める。
 それもそのはず。

 「まっさか、ソードスキルなしに、しかも的の裏側に、なんてね〜」

 レミの投げたブーメランは、的の中央……の、裏側へと突き刺さっていたのだ。無論、このSAOにそんな特異なソードスキルが存在するはずもない。つまりはこれは、レミの自前の力だった。もっとも、正確には。

 「……ウッドロンが、居てくれたから……」
 「およ? ……なんかいつもと違うね〜?」
 「……その通りだから……」
 「……ん、ありがとね。気持ちだけ受け取っとくよ」

 ウッドロンの、精巧極まる《木工職人》のスキルあっての神業だった。

 ブーメラン、という武器は、このSAO内でもかなり特殊な武器であり、……そしてSAO物理エンジン技術の粋を結集した芸術作品でもある、とレミは思っている。コアンダ効果とベルヌーイの定理が忠実に再現された揚力効果。剛体回転運動に生じる歳差運動までもを実現したこの最先端技術の結晶と言えるSAOのスペックを最大限に使った、神業。

 それを可能にしたのは、レミとウッドロンの二人……実質は大部分がウッドロンの
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