番外編
青騎士伝説 前編
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――――――っ!!!
響き渡った哄笑が、森を行くシリカの耳を振わせた。
いや、正確には、シリカ達の、だが。
四十四層のはずれにある、何処にでもある様な森林地帯。名称すらもまともに覚えられないようなその開放型ダンジョン、訪れるプレイヤーは限りなく少ない。シリカ達がここにやってきたのは、そのダンジョンが『獣使い』の操る使い魔を強化するアイテムが手に入る、という情報を仕入れたからだ。
「な、なんですか……?」
「……わ、分からない……と、とりあえず戦闘準備だけは、」
肩でキュルルと啼くシリカの使い魔の小竜、『ピナ』を宥めながら、シリカも短剣を構える。共にパーティーを組んでいる四人組の中のリーダー格の男も、緊張した面持ちで武器である両手剣を背中の鞘から抜き放つ。
人の声に対していきなり戦闘姿勢なのは、その聞こえた哄笑が、
「ハハハ!!! 馬鹿だぜコイツ!!!」「殺せ! 殺せえ!」「バーカ、バーカ!!!」
あまりにも下卑て、悪意に満ちていたからだ。正直、まともなプレイヤーのそれとは思えない、耳を塞ぎたくなるようなセリフの山。恐らく……いや、間違いなく、犯罪者プレイヤーの声だろう。
(あの人達と、同じ……)
シリカには、身に覚えがある。かつて自分を狙って、オレンジ集団に襲われたことがあるのだ。自分をかばってくれた一人の剣士に対して、圧倒的な大人数で斬りかかる男達。暴力に酔った目に、罵る快感に囚われた口。あれが『攻略組』の剣士であるキリトでなかったら、彼は……そして自分は、あっさりと殺されていただろう。あの時は、
「っ!?」
「な、なん、だ……?」
唐突に、茂みの奥の声が静まった。
あの時と、同じように。
「……な、なにが、起きたの……?」
たしかあの時は圧倒的なレベル差を持ったキリトが一向に堪える様子が無かったことを訝しがってのことだった。一体何事かと、《索敵》持ちの男がそっと茂みの奥の開けた場所を覗き。
その次の瞬間、
「うわあああああ!!!」
一転、耳を劈く様な悲鳴が上がった。恐る恐る偵察していた男が突然の絶叫にビクンと肩を震わせた男の後ろから、のしかかる様にシリカ達もその光景を覗いて、
「っ!?」
言葉を失った。五人全員が、息をのんだ。
「ひっ、な、なんだ、コイツっ!?」「な、なんで死なないんだ!?」「ど、毒ナイフが刺さってるはずなのに!?」「り、リーダー!」「ひ、く、くるなっ! は、離れろっ!!!」
いたのは、十人ほどの集団だった。ぐるりと円を描くように布陣した男達の殆どのカーソルが、目に痛いオレンジ色。犯罪者の印。だが、悲鳴を上げているのは、他でもな
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