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ジーク・カイザー〜史上最大の作戦
ジーク・カイザー〜史上最大の作戦
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一同から若い覇者へ、同情の視線が送られた。
「姉君に、怒られたのだろうな」
「怒られたな、あれは」
しばしの間、主君と姉との会話を想像していた一同であったが、ロイエンタールが事態の本質を突いた。
「卿は相変わらずどんな時でも手段を選ばぬな。しかし、いかにパーティー開催が許されたとあっても、陛下を悲しませるパーティーでは、作戦成功とは言えまい」
そうだなと、諸提督の同意があり、オーベルシュタインはそっと付け加えた。
「それについては、最後の仕上げが残っている……さて、そろそろ開会の時間だ」


 どんよりとした表情の皇帝を中心に、形だけは華々しく、パーティーは開会された。代表者の祝辞が続く中、オーベルシュタインはそっと、中央に座しているラインハルトの脇へ歩み寄った。
「陛下」
ラインハルトは顔を上げず、アイスブルーの瞳にこらえた涙をいっぱいに溜めている。
「卿の声など聞きたくない。下がれ」
子どものような口調でそう言い放つ主君に、オーベルシュタインは再度声をかけた。
「陛下、グリューネワルト大公妃殿下より、お届け物がございます」
「何だと……?」
祝辞が終わり、予定で行けば次はラインハルトの挨拶である。
「陛下、こちらへ」
司会者とオーベルシュタインに促され、ラインハルトがマイクの前に立つ。
「では、陛下にご挨拶を頂く前に、祝賀の席には欠かせぬ、あれをご用意いたしましょう!」
司会者の声が高揚し、ドアの外から大きなワゴンが運ばれてくる。
「おお!」
歓声が上がり、ラインハルトもそのワゴンの上を見つめていた。
「グリューネワルト大公妃殿下お手製の、バースデイケーキです!」
白いクリームがたっぷりと使われ、装飾も選びに選びぬかれた立派なケーキを見て、ラインハルトの頬が紅潮し、表情もぱあっと明るくなったのが、傍目からも見て取れた。
「姉上のケーキ!!」
今までの重苦しい表情はどこ吹く風、といった様子で、ラインハルトは目を輝かせながら挨拶を始めた。主君の煌めく瞳に、再び覇気が戻ったのを、穏やかな表情で眺めて、オーベルシュタインは隅の方へと戻った。
「卿にしては、気の利いた趣向ではないか」
帝国元帥の正式礼装を隙なく着こなすロイエンタールが、そっとオーベルシュタインに囁いた。
「ミッターマイヤー元帥にご助言を頂いてな。このために密かに宇宙船を手配し、姉君にフェザーンへお越し頂いた甲斐があったというものだ」
二人は改めて、満面の笑みを浮かべる主君へと目をやった。
「諸君らのはからいに感謝する。今日は皆も、大いに楽しんで行くように」
皇帝陛下がそう締めくくると、会場は「ジーク・カイザー」という歓呼の嵐に包まれた。


(Ende)
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