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ジーク・カイザー〜史上最大の作戦
ジーク・カイザー〜史上最大の作戦
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そうだがな」
オーベルシュタインは静かに頷くと、周囲へさっと目をやり、諸将を更に部屋の隅へと寄せてから、おもむろに口を開いた。
「まず、水面下で国務省、宮内省、内務省に働きかけ、各尚書連名により、皇帝生誕日の祝日化を提案する文書を出して頂いた」
出だしから突拍子もない発言に、一同が目をむく。
「だが、陛下はお断りになるだろう」
「いかにも。無論、それは想定の範疇だ。……その提案文が陛下の御元へ届いた時期に、私は陛下に謁見した。表向きはイゼルローン攻略戦準備についての報告と称して。一通り報告を終えると、陛下は案の定、私に意見を求めてこられた。ことさら陛下を神格化しない私なら、反対意見をもらえると考えられたのであろう」
自分が陛下からどう評価されているか。その点までも作戦に盛り込んでくるあたり、やはりオーベルシュタインは曲者である。誰もがそう思ったが、めでたい席でもあるため、口にするのは憚られた。
「そこで私も、祝日化の意義と、古来よりそういった慣習は珍しくない旨、ご説明した。しかし陛下はどうしてもお認めにならなかったため、それでは正式に各省へその旨を返信されてはどうかとご提案申し上げた。併せて、もし祝日化を却下なさるなら、誕生日の記念式典をご開催下さるよう進言した。民衆や臣下たちの忠誠心に応え、彼らの陛下への思いを汲んでやるためにも、祝日化か記念式典か、どちらかはなさるべきです、と」
大事を先に示し、譲歩したように見せて小事を提案することで、本来の目的を達成する。交渉術としては珍しいことではない。しかしここでの大事の提案を、自分は連名せず他人にやらせ、あたかもラインハルトの味方面をして小事の提示をしているところが、何とも狡猾であった。
「それで、陛下はご納得されたのか」
ミッターマイヤーが問うと、オーベルシュタインはすぐさま否定した。
「いや……この程度で首を縦に振られるお方なら、卿らも苦労しなかったことであろう」
「確かに……」
オーベルシュタインは一呼吸置くと、さらに作戦の続きを語った。
「陛下から各省への返信が届いた頃を見計らって、グリューネワルト大公妃殿下へ連絡を取った。皇帝陛下が、臣下たちが良かれと思って提案する、祝日化や記念式典をことごとく拒絶なさり、手を焼いておりますと、包み隠さず事情をお話ししたのだ。本来なら国務省を通してご相談申し上げることだが、各尚書たちは得難い存在であるため、陛下に内密で大公妃殿下にご連絡差し上げ、万が一にでも陛下の逆鱗に触れるようなことがあっては、帝国がその逸材を失うことにもなりかねぬ。したがって、軍務尚書たる私の一存でご連絡申し上げたが、そのあたりの事情もお察し頂き、陛下にご諫言あられたし、と。その後の大公妃殿下と陛下のやり取りは分からぬが、ともかくパーティーの許可は下りた、というわけだ」

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