第三章 暗い過去
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その
目的はナンパである。桜庭も中条もそちらの方は経験豊富だったが、今回の趣向はナンパ
した女性の数を競うというものであった。
ルールは簡単だ。駅で降りると二手に分かれる。女性をゲットしたか否かは、ディナ
ーに同伴して互いに確認しあうという方法だ。肉体関係が出来れば、当然態度に出るし、
ディナーの後にホテルに行く場合もそれと分かる。
成果は上々だった。何度も失敗はあったが、中条は一週間で三人、桜庭は5人の女を
ものにし、勝負は桜庭が勝ち、中条から10万円をもぎ取った。いずれにせよ、東京から
来た学生というフレーズが、九州の女性には魅力的に聞こえるらしい。
最後は熊本の海辺のホテルに宿泊した。お互い、女に気を使うナンパに疲れ果ててい
たし、終いには数を稼ごうと、顔やスタイルなどお構いなしでナンパしたため、女に辟易
していた。ゆっくりと残りの休暇を過ごすことにしたのだ。
久々に夜更かしもせずに寝たため、二人は朝早めに目覚め、海岸を散歩しようと部屋
を出た。エレベーターを降りるとラウンジには誰もいない。桜庭はソファにどっかりと腰
を落とすと新聞を広げた。中条はフロントのカウンター内に入って、中を物色していた。
その時、自動ドアが開いて、一人の少女がおどおどしながらホテルに入ってきたのだ。
水玉のワンピースに運動靴を履いている。体は細く華奢なのだが胸はたわわに実っていた。
顔にはあどけなさが残っている。中条がようやく少女に気付き、少し躊躇していたようだ
が、カウンター越しに声を掛けた。
「やあ、おはよう。君も早目に起きちゃったの。ここに泊まっているんだろう」
少女はしばらく俯いていたが、小さな唇を動かした。蚊の鳴くような声だ。
「いいえ、家出して、歩き続けて、昨日、眠っていないんです」
予期せぬ返答に、中条はうろたえ、次ぎの言葉を捜していたのだが、なかなか思いつかな
い。桜庭が引き取った。煮え切らない女には高飛車に出るに限る。
「家はどこなんだ」
「八代です」
「お前、高校生だろう」
この言葉には有無を言わせぬ響きを込めた。少女は消え入るような声で答えた。
「えっ、ええ……」
桜庭は中学生だと踏んでいたのだが、それはこれから起こるかもしれない火遊びの言質を
取って置きたかっただけのことだ。これで、まさか中学生だとは思わなかった、という言
い訳が出来たことになる。
「後悔してるんだろう。家出したことは」
「はい……」
少女は俯いたまま答えた。恐らく、母親と喧嘩でもして家を飛び出してきたのだろう。そ
して今は、それを後悔している。そんな雰囲気だ。桜庭は電話番号を聞き出し、少女にキ
ー を渡すと、こう言った。
「家に電話しておいてやる。それに疲れているんだろう。俺達は散歩に行ってくるから部
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