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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
第二十八話
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ヤオはそう言って樹の反論を押さえた。
「人が愛する者を殺めたならその下手人を追い詰めれば復讐を果たす事も出来よう。天のもたらした災害ならどうしようもないから神を呪うしかない」
ヤオの言葉にロゥリィは何も言わない。
「炎龍はどうか? 敵は確かに其処にいるのだ。だが手も足も出ない。捕らえる事も出来ず、罰する事も出来ない。天のもたらした災厄でもない。この怒りは何処へ向ければ良いか? 恨みのやり場は何処へ向ければ良い? 愛する者を奪われた憎しみは誰に向ければ良いのか?」
ヤオは伊丹の前に出る。
「復讐とは愛する者を失った怒りと憎しみをはらし、自分の魂魄を鎮めるために必要な儀式だ。それを経て、初めて遺された者の心は癒され、現実に立つ事も出来るようになる。明日を見る事もやがて出来よう」
ヤオは膝をついて額を床に擦りつけた。
「この娘のついでいいから此の身の同胞を救ってほしい。我が身を捧げる。何をしてもいい。お願いします、炎龍を退けた人よ」
ヤオはそう言い放ったのであった。
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