第二幕その五
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第二幕その五
「それでだ」
「ではワインを」
「そして駱駝のを踵を」
「それに鶯の舌を」
「孔雀の脳味噌を」
「ローマ時代の馳走だな」
それを聞いてまた呟くファウストだった。
「これは」
「本当によく御存知ですね」
「昔の文献で出ていた」
またメフィストに話すのだった。
「これもまた」
「ふむ。では味は」
「いや、それは知らない」
ただ読んだだけだというのである。
「残念だが」
「他にも色々とありますが。ヤマネもありますしウズラも」
「他にもありそうだな」
「勿論です。そうしたものも如何ですか?」
「そうだな。貰おうか」
こう話をしてであった。ワインや様々な御馳走が二人に出される。二人はその中でそういったものを食べながらであった。そのうえでメフィストはガラスの珠を出してきたのだった。
「これですが」
「ガラスだな」
「ただのガラスではありません」
そうだというのである。
「ここに何が見えますか?」
「世界が」
それがだという。
「空で丸く上がったり下がったりしているな」
「跳ねたり光ったりしていますね」
「そうだな、それに」
ファウストはさらに見ながら話した。
「太陽の周りを光が回り」
「震えて吼えて作って壊したり」
「これが世界なのか」
ファウストはその光を見てまた話す。
「これがか」
「時には何も産まず時には多く産みます」
「時によって」
「その巨大な背中の上に一族がいます」
メフィストの言葉が変わった。
「一族?」
「猥雑にして狂った高慢にして小心な」
「ふむ」
「不実にして卑しい一族がです」
いるというのである。
「そしていつ何時も邪悪の世界の端から端まで貪る一族がです」
「我々の人間のことだな」
「悪魔もです」
自分達もなのだという。
「その我々も奴等には空虚なほら話であり地獄は冗談の嘲りであり」
「そうしたものだと」
「天国はましてや」
「ましてや?」
「愚弄と嘲笑でしかありません」
天国についてはかなりそうだった。
「そんな人間と我々ですが」
「我々は?」
「最後の審判の日まで同じです」
「さあ踊ろう」
「歌おう」
メフィストがそのガラスを収める中でまた騒ぐ周りだった。
「世界はまた隠れた」
「それではその隠れた世界の中で」
「また騒ごう」
「これが喜びか」
ファウストはその騒ぎを冷静に見ながら述べた。
「これが」
「まあそのうちの一つではあります」
メフィストもそれは否定しなかった。
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