暁 〜小説投稿サイト〜
変人だらけの武偵高
1話
[1/3]

前書き [1] 最後 [2]次話
最悪の目覚めだ。
喧しく鳴り続けるインターホンの音で覚醒した遠山キンジは、日課である朝の星座占いを見るまでもなく今日は最悪の一日であることを確信する。
キンジはオカルトの類を信じてはいない。が、自身のジンクスーー最早習性と言っていいそれを守らなければ落ち着かない性質があった。そのため彼の朝食は決まって、たっぷりとピーナッツバタークリームを塗ったトーストとブラックのコーヒーである。
そんなある意味几帳面とも言える彼のジンクスの一つは、寝起きに日光を浴びながら大きく伸びをすることなのだが、今日はどうにもそれが叶いそうもない。
きっちりと閉じ切った、窓ガラスの向こうの雨戸を見て、キンジは沈鬱な気分になった。
キンジは普段、雨戸を閉めて眠る。これも彼の癖ではあったが、ジンクスではなかった。
例えるなら虫除けみたいなものだ。余計なものが自分のプライベートゾーンに入ってこないための、いわば防壁だ。
萎え気味の気分を払拭すべく、胃に何かーー当然、トーストとコーヒーなのだがーーを詰め込もうと、キッチンに向かう。その際、玄関から何かを叩くような音が聞こえたが、気に止めなかった。

朝食が出来上がると、時計を確認しながらそそくさと口に運ぶ。不本意ではあるが、キンジは遅刻の常習犯だ。加えて今日は新学期初日。間違っても遅刻する訳にはいくまい。
キンジは部屋に戻り、畳まれていた制服に着替えようと、寝巻きを脱ぎ掛けたところでーーどこからかの視線に気づく。
そういえば、何やらうるさかった玄関からの音もいつの間にか消えている。
キンジは机の中を弄り、シンプルな黒い箱のような機械を取り出した。それを、部屋の隅々に翳す。
自分のベッド、枕元の辺りで。ピーッと、無機質な機械音が鳴った。
またか。諦めの念を隠さぬまま周辺を探ると、よく見なければ分からないくらい小さなカメラが設置されていた。カメラ部分を見ると、カメラの向こうからこちらへの視線を感じ、気味が悪くなった。
それをティッシュにくるんでゴミ箱に放り捨てて、キンジは疾く着替えを済ませた。

さて、準備は完全に整ったのだが。向こうも準備は万端だろう。
キンジはリビングから動けないでいた。何しろ、廊下に出た時点で彼女には勘付かれてしまう。
前に聞いた時話では、彼女は「キンちゃんレーダー」なる迷惑極まる感覚器官を有しているらしく、ある程度の距離近付くとあらゆる挙動を察知するという。キンジ限定で。
仕方ない、応援を呼ぼう。
キンジはケータイを開いた。
着信履歴、719件。
キンジはケータイをそっと閉じた。
止めよう。彼女の電話に出てないのに、他の人間に電話したなど知れたら、そいつがどうなるかわかったものじゃない。
キンジは諦めて、彼女との対面を覚悟した。かつて死地に向かう時よりも、胃が持たれる思いだっ
前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ