黄巾の章
第18話 「……心配なのですよ、貴方のことが」
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
どうとでもなります。問題は二手に分かれた片方に桃香がいて、そちらを取り逃がした場合、人質である桃香を殺す危険があります。それは避けたい」
んー……確かに。
逃げおおせれば、人質なんて足手まといなだけでしょうね。
「じゃあ、あちらを私が相手にすればいいのね?」
「お願いします。とはいえ、寡兵なようですし、無理であれば監視だけで……」
「……ちょっと。わたしを見縊らないでくれる? あの程度なら例え寡兵でも倒せるわよ」
わたしはすこしムッ、として言い返す。
確かに兵の数じゃ負けても、わたしは孫呉の王となる者よ。
黄巾ごときの雑兵などに遅れはとらないわよ。
「……失礼。ただし、侮らないでいただきたい。戦で自らを殺すのは相手を下に見ること。たとえ幾千、幾万の歴戦の将であったとしても」
その言葉に、私の柳眉が逆立つ。
「わたしを侮辱する気?」
「違います。人を侮ってはならない、そう言っているのです」
御遣いの目は真剣だわ。
こちらを卑下するわけでも、尊大なわけでもない。
「例え一騎当千の英傑であろうとも、人を侮った時に死にます。彼を知り己を知れば百戦殆からず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し……これは、貴方の祖の言葉でしょう」
「……はいはい。まるで冥琳みたいな事を言うのね」
思わず、彼と冥琳が重なって見えたわ。
「……心配なのですよ、貴方のことが」
え?
その言葉に思わず、頬が赤くなる。
「きっと周瑜殿はね……」
がくっ。
ちょっと!
期待させるんじゃないわよ!
「あーもう。はいはい、わかりましたぁ。無理はしないわよ。向こうに残った冥琳のことだもの。多分、今頃はこちらに援軍を出していると思うわ。無理ならそれを待つから大丈夫よ」
「そうですか……よい臣をお持ちなのですね。そして、貴方も彼女を信頼している」
「当然よ」
冥琳はわたしの唯一無二の友だもの……
「ではお願いします。私は東に向かった部隊を追いますので……」
「貴方こそ無理しちゃダメよ?」
「はい……孫策殿」
「?」
御遣いがこちらをじっ、と見つめる。
な、なによ……
「ありがとう」
「!?」
わ、笑った?
今、笑った?
うわ、うわ、うわ!
なに、なになに!?
何でこんなに顔が紅くなるのよっ!?
「しぇ、雪蓮!」
「は?」
「わたしの真名! 『雪蓮』よ!」
思わず口走っていた……
「……私、いえ、俺は真名がないから、盾二と呼んでくれ。ありがとう、雪蓮」
そう言って、微笑む御遣い――いえ、盾二。
そして、盾二は振り返ると
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ