十二話 「蟲」
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なという方が無理だろう。だが、だからといって何か言えるわけでもない。
反抗期故の小さな冒険。それであの家出は終わっているのだ。それ以上でも、それ以下でもない。
黙ったカジ少年と代わりに、ナツオがそう言えばと口を開く。
「こないだ、イツキの親見たぞ」
「へえ。何してたんだ」
「何か黒いスーツ着た人と話してた。余り見ない感じだったな。書類貰っていたぞ。頭がどうとかって」
「仕事関係だろうな。其の辺は俺は知らないよ」
交易だか貿易関連の仕事だと聞いている。なら、外からの人間とのつながりもあるだろう。気にはなるが、込み入って調べることでもない。
カジ少年は右手首……あの家出の土産として渡した木彫りの腕輪、それを見ながら何度か俺との間で視線を往復させる。
このままでは埒があかない。それに、こんな展開は望んでいない。だから、俺は適当に口を開く。
「ま、取り敢えず今はいいじゃないか。それより今日は何するんだ? 何か考えでもあるのか?」
「……あるよ。今日の為に用意したやつがさ」
その言葉に俺だけでなく他の奴らも微かに驚いているのが伝わる。考えなしに集まりその場で適当に考えるのがいつもの常。考えてあっても適当なのに前もって準備とは初めてではないか。
他の友人たちの意識もそちらに写ったようで俺に対しての視線が消える。ただ、視線の中心に当てられたカジ少年の視線だけは俺に向き続けている。
それが酷く居心地が悪く、つい視線を逸らす。
小さく、舌打ちが聞こえた気がした。
「用意してあるのならさ、早くそれしようぜ」
「ああ、それもそうだな。じゃあ、行くか」
暫く歩いた先、街からも随分離れた所で着いたのは湖の畔だった、
元々は海の一部だったのだろう。辺りは森と山。反対側の更にずっと先に海が見える。湖の円周は酷く広く、そして歪だ。
俺は前に、一度か二度来た覚えがある。確か白と一緒にだ。探索のついでと、鍛錬にいい場所を探して。
見る限り人は余り見当たらない。整えられた道から僅かに離れているのもあるのだろう。
後ろで楽しそうに話し合う友人たちの輪に入る気にもなれず、先頭を歩くカジ少年のすぐ後ろについてその畔を進む。
喧騒と静寂。その狭間を歩く。水辺に小さく波が押し寄せるせせらぎが横から押し寄せる。
「話さないなら別にいい」
唐突にカジ少年が言う。後ろの友人たちにはきっと、届いていない声。俺にだけ聞こえているだろう。
別にいい。もう一度、カジ少年が言う。
「話さないっていうならつまり、信頼されてないんだろ。ならいいよ、もう、別に」
「そういうわけじゃ……」
「なら何なんだよ。年上だし、嫌味たらしいとこあるけど良いやつだと思ってた。仲良くなれたと
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