暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第四話 ハーフエルフの少女
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小さく頭を下げると駆け出していった―――

 ―――が、

「きゃっ」
「おっと」

 駆け出そうとした瞬間、足元に転がっていた石に足を取られ転けそうになったティファニアを、一瞬で間合いを詰めた士郎が抱きとめた。士郎の厚い胸で、巨大な山脈が二つ大きく歪む。胸の大きい女性を少なからず知っている士郎でも、その感触は驚きであった。 

(っお? こ、これは一体? む、胸? し、しかしこれは……桜? リズ? いや、これはそれらを超えるぞ……ッ!)

「っあ、あのっ……?」
「え? あ、ああ、すまない」

 衝撃の感触に打ち震える士郎を呼び覚ましたのは、士郎の腕の中でか細い声を上げるティファニアであった。
 顔を真っ赤に染め上げ、子猫や子兎のように震えるティファニアの様子に、士郎は慌ててティファニアを放す。その際、怪我させないようにそっと放し、怪我をさせないようにするのを忘れない。

「……あ〜〜……すまない、その、脅かしてしまったようで、怪我はないか?」
「え、えっと……はい、その、ありがとうございます」

 士郎の声に、ティファニアは今度は逃げ出さず頭を下げる。
 ……身体は細かく震えているが。

「…………」
「…………」

 沈黙が満ちる。
 ティファニアは下げた頭を少し上げた姿で、下から覗きこむように士郎を見つていめる。士郎はその視線に気づいてはいたが、視線を合わせることなく、陽光を受け眩いほど煌めくティファニアの髪に視線を向けている。

「あ、あの」
「その、だな」

 突然ティファニアが顔を上げ士郎に話しかけたが、合わせたかのように口を開いた士郎の声と重なってしまう。
 二人の間に再度沈黙が落ちる。
 口を開けた微妙な顔のまま、数秒が過ぎる。

「な、何かな?」
「えっ?! あ、その……え……と」

 士郎が先にどうぞと手を差し出すと、びくんっと身体を跳ねさせたティファニアが慌て出す。
 視線と首をうろうろと動かしたティファニアは、あわあさと口を震わせていたが覚悟を決めたのか、ごくんと喉を鳴らすとおずおずと士郎を見上げ口を開いた。

「え、エミヤシロウさんは、その、わたしが怖くないんですか?」
「ん? 怖く? 俺が君をか?」
「っ、は、はい」

 士郎が自分を指差しながら首を傾げると、ティファニアはびくびくと身体を震わせながらも頷いて見せる。

「ふむ、まあ、確かに君は怖いほど綺麗だが」
「ふぁ? こ、怖いほど綺麗?」

 ぼっと顔を更に赤く染め上げたティファニアがうつむく中、士郎はそんなティファニアの様子に気付かず、あらぬ方向を見ながら顎を撫でうんうんと頷いていた。

「ああ、初めて君を見た時、光の妖精かと思ったほどだ」
「ひ、光の妖精? そ、そ
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