第八章 望郷の小夜曲
第四話 ハーフエルフの少女
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したのか? セイバーはテファの使い魔ではないと思っていたんだが」
「あの騎士かい? いんや、ありゃ使い魔じゃねえな」
「わかるのか?」
士郎がさっさと答えろと言うように、刃を軽く叩く。
「まあな。それぐらいは……何となくな」
「何となくか」
「しょうがねえだろ。何千年前のことだと思ってやがんだ。他の使い魔の事なんかほとんど覚えてねえよ。それより相棒はどうなんだい? あの騎士とどうやらただならない関係みてえだが。裸に剥いて、ルーンがあるかないか調べれば一発だ―――」
「―――鋳潰すか」
「―――すみません」
スラスラと言葉が流れていたデルフリンガーの声が、士郎のボソリとした小さな声で止まった。
「……デルフ、一つ聞きたい」
「何でぇ?」
「俺は……もう一度ルイズの使い魔になれるか?」
ふんっ、と鼻もないというのに、デルフリンガーから鼻を鳴らす音が響く。
「障害は二つある。一つは、あの嬢ちゃんが『サモン・サーヴァント』を唱えた時、相棒の前でゲートが開くか。二つ、『コントラクト・サーヴァント』を二度した使い魔なんて聞いたことなんかねぇってこと」
「どういうことだ?」
「使い魔召喚てなあ、実際どうやって選ばれるのなんか分かんねぇんだ。特に嬢ちゃんは虚無の使い手だ。輪に掛けて分かんねぇ。ま、『運命』なんて言われたりしてるみてえだがね」
「『運命』……か」
士郎は左手を見る。
そこには、令呪の姿しかない。
「ああ、それが本当なら、相棒と嬢ちゃんの『運命』がまだ結びついてんなら、もう一度相棒の前にゲートは開くかもしれねえし。切れてたらこのままさ」
「そうか」
「だがな相棒。さっきも言ったが、メイジと二度の契約をした使い魔なんざ聞いたことねぇ。つうことはだ。もし二回目の契約をすれば、そいつの身体に何が起きるか分かんねぇっちゅうわけだ。……それでもやるのかい?」
「……さて……な」
士郎が手に持ったデルフリンガーを、再度隣に立てかける。
頭の後ろに手を組み、後ろの壁に寄りかかり、風と戯れるように響く歌声とハーブの音色に耳を傾ける。
「何でだろうな……」
「相棒?」
「この歌を聴くうち……昔のことを思い出す」
「そりゃそうだろう。こいつはな、ブリミルが故郷を想って奏でた曲だからな。『望郷』ってぇもんが、こんなかにゃ、目一杯詰まってんのさ」
「―――『望郷』……か……なら」
目を閉じ、歌声に身を委ねる。
「―――俺にとっての故郷は―――」
士郎の顔に苦笑いが浮かぶ。
しかしそれは、苦々しく思うことを、無理矢理笑みで誤魔化そうとしたものではなく。
気恥ずかしさを隠すために、浮かべたものだった。
「
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