第八章 望郷の小夜曲
第四話 ハーフエルフの少女
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「大事な人なんだな」
「……はい……エルフのわたしを……妹だと……言ってくれました」
空になったグラスを床に置くと、空になった手を士郎の腕に絡ませるティファニア。縋るように身を寄せたことで、ティファニアのその豊かな胸が士郎の腕により柔らかく歪む。
「こんな……家族を殺した……わたしを……妹だと……」
柔らかく暖かな感触。
誰もが夢心地になるその中。
しかし、士郎は気付いていた。
その柔らかな感触の中に―――揺れる心を。
「―――ぁ……」
だから士郎は抱きしめた。
「し、ろ……う、さん?」
不安に揺れる心を。
「どうし、たんで、すか?」
孤独に揺れる心を。
「―――嫌か?」
少しでも止めるために。
「……いえ……ただ……」
「どうした?」
少しでも伝えられるように。
「もっと……強く……して下さい」
「……ああ」
包み込む。
「……シロウさん……」
「何だ」
全身で少女の心を受け止めるかのように。
「余り無茶は……しないで……」
空から降り注ぐ夜の光が、淡く二人を照らし出し。
「……善処する」
「……ばか」
一つの影を創り上げた。
―――神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる―――
―――神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空―――
―――神の頭脳はミョズニルトン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す―――
―――そして最後にもう一人……。記すことさえはばかれる……―――
―――四人の僕を従えて、我はこの地にやってきた―――
澄んだ声が夜風に乗って耳を揺らし、士郎はそっと目を開く。
士郎に背を向け座り込んだティファニアが、手に持ったハーブを鳴らし。
降り注ぐ月光のように美しい声を響かせている。
士郎はその歌声に身を委ねながら、隣に立てかけられているデルフに囁きかけた。
「―――デルフ……先程の話―――」
「ああ。相棒の考えている通りだろうさ」
「虚無か」
デルフリンガーを手に取ると、士郎はその刃に視線を落とす。デルフリンガーの刃には曇り一つなく。キラリと月明かりを反射させる。
「テファが……虚無の使い手……とするとセイバーはテファが召喚
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