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剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第四話 ハーフエルフの少女
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れどころか懸賞金さえ掛かっていた。士郎はその臨時収入で大量の食料を買い込んだのはいいが、随分と時間が掛かってしまったため、すっかり遅くなってしまっていた。
 この時間なら皆寝てしまっているだろうなと考えていると、森が開き、月明かりに照らされたウエストウッド村が見えた。

「やはり、もう寝てしまっ……あれは?」

 十軒程度の小さな村には明かりは見られず、村の中は静まり返り、虫の音が聞こえるだけであった。
 しかし、鷹の目と称される士郎の目は、月明かりしかない明かりの下、一軒の家の軒下に人影が座り込んでいるのを見付けた。

「ティファニア」
「おかえりなさい」

 士郎が軒下に近づき声を掛けると、その人影は月明かりで黄金色に輝く髪を揺らしながら笑いかけてきた。

「待たないでいいと言った筈だが。朝のこともある、一人でいるのは危ないぞ」
「ごめんなさい。でも、少し……シロウさんと話しがしたかったから」
「話を?」
「はい、それに一人じゃないですよ」

 士郎がティファニアの横に座ると、ティファニアは横に置いていたグラスにワインを注ぎ士郎に手渡した。ワインを受け取った士郎がティファニアの言葉に首を傾げていると、ティファニアの背後から地の底から響くような声が響いた。

「あ〜い〜ぼ〜う〜」
「デルフか、どうしてこんなところにいるんだ?」
「そりゃないだろ相棒……ず〜とほったらかしにしやがって。はぁ、もういいや。まあ、見張りのようなもんさ。誰か近づいてきたら警告をする程度は出来るからな」
「そうか。それはご苦労だったな」
「それだけかい相棒。俺っちは剣だぜ相棒。振るわれる事に意味があんだよ。それが何だい相棒。最近じゃ腰に差すどころか家の中に放りっぱなしじゃねぇか。もうちっと構ってくれたっていいじゃねぇか」
「ま、考慮しとく。で、話とは何だ?」
「え、い、いいんですか?」

 士郎がデルフリンガーを片手であしらいながらティファニアに顔を向けると、ティファニアは未だ抗議の声を上げるデルフリンガーを横目に戸惑っていた。
 戸惑うティファニアを「いいからいいから」と話を促すと、ティファニアは自分の分のグラスにワインを注ぎ、コクリと一つ喉を鳴らすとポツリポツリと話を始めた。

「……わたしの母がエルフだったんですが、母は、今はもう亡くなってしまったアルビオン王の弟……この森を含む広い領地を持つ大公のお妾さんだったんです。このハルケギニアで怖がられるエルフの母が、どうしてそんな父のお妾になったのかは分かりません」

 小さく息を着いたティファニアは、グラスに残っていたワインを一気に飲み干すと、空に浮かぶ二つの月を見上げる。

「エルフである母と、母譲りのこの耳を持ったわたしは、公の場に出ることが出来る筈はなく、
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