第二十九話 兵学校その七
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「プールもちゃんと用意してね」
「あの学校もだよな」
泳いでいると左手に見えた、その学校が。
見れば木々が綺麗に整えられており歴史を思わせる赤い煉瓦の建物が見える。白い神殿の様な建物も。
その建物達を見て言うのだ。
「あそこか」
「あそこが幹部候補生学校なの」
海上自衛隊の、というのだ。
「そうなの」
「そうか、あそこがか」
「この合宿の間にも行くから」
これは勉強で、である。
「あそこにね」
「海軍なあ、面白そうだな」
「海軍も歴史だから」
そうした存在だというのだ。
「その歴史を勉強しにね」
「あそこに行くんだな」
「面白いもの一杯あるわよ」
「色々あるんだよな、あそこは」
「そう、歴史的にも凄い場所だから」
それが今の海上自衛隊幹部候補生学校だというのだ。
「しかも綺麗だし」
「木とかかなり整えられてないか?」
「グラウンドもね」
今泳いでいる海から見えるそうした場所もだというのだ。
「いつも整えられてるの」
「いつもかよ」
「そう、あそこは毎日念入りにお掃除もする場所だから」
「そんなに掃除が厳しいのか」
「うちの学校でもお掃除はするけれど」
これはどの学校でも同じだ、掃除もまた教育の一環でありこれを欠かすことはそのまま教育の重要な部分の放棄になる。
「あれどころじゃないのよ」
「具体的にはどんなのなの?」
琴乃は泳ぎながら里香に尋ねた、遠泳はある程度の列を組みながら進んでいる。
「あそこのお掃除って」
「チェックが入るのよ」
「ちゃんとお掃除したかどうか?」
「それでも少しでも、埃一つでもあれば」
それこそほんの些細な汚れが一つ残っていてもだ。
「やり直しになるのよ」
「うわ、厳しいのね」
「整理整頓は絶対の場所だから」
掃除にこれはというのだ。
「制服も埃一つ、皺一つを見られるから」
「制服の皺もなの」
「そう、そこまでなの」
「何か無茶苦茶厳しいわね」
「あそこは特別なの、何でもチェックされて」
そしてだというのだ。
「少しでも不備があればやり直しなの」
「そういえば制服もいつもアイロンかけてるのね」
「そう、いつもね」
それこそ毎日アイロンをかけねばならないというのだ。
「しかも冬服は黒だから」
「埃目立つでしょ、黒は」
「だから余計に気をつけないといけないのよ」
「私あそこにいるのは無理ね」
琴乃は制服の話まで聞いたところでこう結論を出した。
「制服に埃一つあっても駄目だなんて」
「それに自衛隊は何処でもだけれど」
里香はその琴乃にさらに話す。
「六時に起きないと駄目なの、絶対にね」
「あっ、それは聞いてるわ」
琴乃もこのことは知っていた、これはどの自衛隊でも同じである。
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