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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第三十四話 征途
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は親友らしいから。

『やあ、エーリッヒ。どうかな、艦隊を指揮するのは』
「暇だよ、ナイトハルト。全部参謀長に任せているからね。指揮官というのがこんなにも楽だとは思わなかった。皆出世したがるわけだ、納得したよ」
頭領の言葉に皆が苦笑した。ミュラー提督も苦笑している。もっとも頭領の言葉は嘘じゃない。頭領は殆ど何もせずメルカッツ参謀長に全て任せている。本人は指揮官席でスクリーンに映る宇宙空間を見ているだけだ。

『申し訳ありません、メルカッツ閣下。こいつは昔から冗談が下手で……』
「いやいや、気にしてはおらんよ、ミュラー提督。指揮官とは細かい事は気にせず大本を押さえれば良い。黒姫の頭領の言う通りだと私も思う」
穏やかな口調だった。本気かな? でも頭領とメルカッツ参謀長は良い感じなんだよな。お互いに信頼し合ってるって感じで。

「ローエングラム公も大変だね、私を公の後ろに配置しその後ろに卿を置くとは……。随分と気を遣っているようだ」
あれ? どういう事なんだろう。艦隊の航行順番に何かあるのかな。確かに僕らの前はローエングラム公で後ろはミュラー提督の艦隊だけど。

『卿を御自身の後ろに置くというのは卿を信頼しているという証さ。卿の事を不安視する人間も居るからな』
頭領が笑い声を上げた。
「万一私が馬鹿げたことをしそうになったら卿が引き止めるというわけだ。責任重大だね、ナイトハルト・ミュラー提督」
頭領の言葉にミュラー提督が苦笑している。“気付いていたのか”と呟いた。驚いた、頭領の言葉は本当だったんだ。皆顔を見合わせている。

「私を公の後ろにと言ったのは公自身だろう。卿を私の後ろにと言ったのはフロイライン・マリーンドルフかな、詰まらん小細工をする」
ミュラー提督の苦笑は止まらない。多分これも本当なんだろうな。凄いや、頭領は全て見抜いている。

「公の悪い癖だな。相手を信じているという事を過剰に表現する。私人としては悪くないが公人としてはどうかな。特に統治者としては……」
『不満か、エーリッヒ』
ミュラー提督の言葉に頭領が頷いた。良いのかな、ローエングラム公の批判なんて。参謀達の中には顔を顰めている人も居る。

「付け込まれる危険性が有る。私の配下の人間を唆して公の艦隊を攻撃させようと考える人間がいるかもしれない。宇宙の統一を望まない人間、或いは私を排除したいと考えている人間、そしてその両方を望む人間……」
『……』

ミュラー提督が考え込んでいる。そうか、そういう可能性も有るんだ。この艦隊って危険なんだ、驚いたな。さっきまで顔を顰めていた人達もミュラー提督同様考え込んでいる。凄い、頭領は宇宙空間を見ながらずっとそれを考えていたんだ。

「公明正大であろうとする人間は得てしてこの手の陰謀に足を掬われがちだ。公
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